「戦争映画と言えない戦争映画」シン・レッド・ライン yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画と言えない戦争映画
テレンス・マリック監督の1998年の作品。
かなり有名な監督みたいね。作品観たのは初めて。
1942年8月、ガダルカナル島での日本軍とアメリカ軍の戦いを描いている。
とは言え、ドンパチがメインのただの戦争映画ではない。
全体を通して詩的な雰囲気が漂う。
これはこの監督の作品の特徴なのかもしれない。
戦闘シーンは余計な脚色が無くリアルに感じるが、登場人物の独白が結構多い。
戦争の悲惨さと、その極限状態の中で人間とは?という問いを問うているのだろう。
もちろん我々日本人の祖父や曽祖父の世代の人とアメリカ人との戦争なので、殺されるのは日本人だ。しかし、アメリカ人も同じくらい殺される。
人種の問題ではなく「戦争」そのものへの問いなのだろう。よって、戦闘の対象が日本人かどうかはどうでも良く、そのことに日本人として引きずられることはなかった。
妻がいる兵士の回想が結構多かったが、最後妻の裏切りとも言える離婚の承諾をしてほしい、ってお願いは、この戦争を経験したものにとって酷過ぎる。
「寂しかったらから」ですまされても・・・本人はそんな感傷など入り込む余地がない世界で戦っているのに。
まぁ、妻側の視点に立てば、その事情を知る由もないわけだが。。
自然とともに平凡に生きているガダルカナルの島民と接していた登場人物の一人が、戦闘体験を経た後で、島民との距離を感じてしまう。
人を殺したことで「人間性」という「シン・レッド・ライン」を超えてしまった。
それが「戦争」という行為だ。まさに魂が毒される。
絶対に経験したいと思わない。
人間にとっての至高は「愛」なのだろうが、それすらどうでもよく、「世界の美しさ(残酷さ)」こそ至高という思想が込められている映画と最後に感じた。
独白含め、神の目からの視点が感じられた映画だったので。
それは私の価値観とも合致するので、私はこの映画が好き、と言える。