「貧困家庭の哀しさ、ボクシングの危険さが描かれている」ミリオンダラー・ベイビー 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
貧困家庭の哀しさ、ボクシングの危険さが描かれている
貧困家庭出身の女性マギーが、30歳を超えてボクシングジムに入り、懸命に努力して試合に連勝できるようになる姿が痛快な映画。父親を失った彼女にとって、トレーナーのフランキーが次第に実の父親のような存在となっていくのが心温まる。
マギーの母親は生活保護を不正受給しており、弟は刑務所にいたという、どうしようも無い人間しかいない家庭に彼女は育っている。マギーの危機に際しても、家族は彼女の所有する財産にしか目が無い。ここに底辺の人間の余裕の無さや、厚かましさ、浅ましさが描かれていてリアルに感じた。そのような劣悪な環境でマギーは育っているので、ボクシングにかける思いの強さは並々ならぬものであったはずだ。にもかかわらず、あのような事態になってしまった彼女の悔しさと絶望は察するに余りある。
一番最初の試合のシーンから、ボクシングのような顔や頭部を攻撃できる格闘技は特に危険だと思いながら観ていた。マギーが大怪我しないか、ヒヤヒヤしながら観ていたのだが、案の定目も当てられない状況になってしまった。作中にも、試合で片目を失明したモーガン・フリーマン演じるスクラップという男が出てくるが、彼がボクシングの危険性を物語っている。
身体が健康であることは心の健康にもつながると思いました。私も親も、脳死判定されたら臓器提供してほしいと言い合っていますが、いざお互い寝たきりになったらそんな心境になれるかはわかりません。この作品を通して家族と話すきっかけになればと思います。
人間の尊厳ってやっぱり働けるかによることなんでしょうかね。先日友人の息子さんが命を絶ったようで、言葉がありませんでした。「生きてるだけでよかったのに」と仰ってたのが心に残ってます。