「見事なパースペクティブ」メメント La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
見事なパースペクティブ
クリストファー・ノーラン監督の名を一挙に世に知らしめた出世作が劇場でリバイバル上映です。
妻を殺されたショックで、直近の記憶が10分程度しか続かなくなった男が犯人を追うミステリーですが、その造りが頗る刺激的なのです。
何の説明もないままに、現在から過去へ向かう時間軸と過去から現在への時間軸を並行して描かれます。しかし、何の説明もないので、「これは一体何なんだ?」とはじめは混乱するのですが、その構造が腑に落ちると、「一体どうなるんだ?」の興味を惹き付けて、入り組んだ複雑な構造にもかかわらず、全く混乱する事がないのはクリストファー・ノーランならではの卓越した力です。これがカッコいいからと下手に真似しようとすると大火傷必至だろうな。
時間と記憶に拘った作品作りが処女作の『フォロウィング』(1998)から更に発展され、やがて『テネット』(2020)にまで続く歴史を2023年の地点から振り返ると見事なパースペクティブです。
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