「記憶と取捨選択と意思」メメント きゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶と取捨選択と意思
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クリストファー・ノーラン監督の映画は、『インセプション』『インターステラー』『TENET』は見たことあったが今のところはこの『メメント』がダントツで難しかったように感じた。
展開の構造的には『TENET』と似ていて(制作順で考えると『TENET』が『メメント』に似ているというのが正しい)、カラーの場面が時系列的には未来から描いており、モノクロの場面が過去から描いていた。そして物語終盤で二つの時間が交差してエンディングに差し掛かるという形だった。
序盤に物語の答えだけを知り、次第に事件が起こった原因が分かっていくという形で描かれていて、謎を解いても新たな謎が出てくるため鼬ごっこをしている気分になる。そのため最初のほうの場面は忘れていて、観客である私たちもメモを書きながら鑑賞したいという気分になる。
このように観客にレナードの体験を追体験させることが、この難解な展開の目的だったのだろう。
物語のテーマは記憶はどこに内在するのか、どう保持するのかという問題であり、記憶は記録ではないというセリフが印象的であった。そのためレナードは出来事をメモに書き起こし、記録として頼っていたが、書き起こされる出来事は取捨選択されるため、その記録も信用することが出来ない。
では人は何を信用すればいいのだろうか。
ただ一つ言えるのは、記憶なんかに惑わされない自分の信念のようなものを頼りに行動するべきなのではないかと感じた。実際、良い悪いかは置いといて、作中のレナードは「復讐」という信念のもとに行動を続け記憶を改ざんしていた。
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