「彼にぴったりなラスト。」マッチスティック・メン きーとろさんの映画レビュー(感想・評価)
彼にぴったりなラスト。
ニコラスケイジは多少狂った悪役や、一癖ある役がよく似合う。今作では潔癖症の詐欺師役を演じています。
サムロックウェルの自然体な演技も良かったです。
日本語が出てきたのがなんだか嬉しかったです。「いち、に、さん」と「乾杯」って言ってましたね。
中盤までは親子が初めて会って、ぎくしゃくしながらもほのぼのな感じとか詐欺の準備とか、まあ平凡な印象なのですが、着目すべきは終盤。怒涛の展開が見事!
劇場型詐欺って言うんでしょうか、大掛かりな騙しでおもしろかったです。
確かに辿ってみればフランクに行き着くんですよね。主治医の紹介とかチャックをターゲットに決めたりとか。
しかも、主人公に自分で選択をしたと思わせているところがうまい。妻に電話をかける勇気がないから主治医に頼んだり、アンジェラに銀行の番号教えるのも…自然に誘導して引き出してる。
伏線としてアンジェラは14歳のはずなのにタバコ吸ったりビール飲んだりしています。
洋画でよく見る不良っ子だったら普通にやってそうなことなので全く伏線だとは思いませんでした…。
ラストが爽やかでいいですね。主人公も穏やかな表情で、チックも収まってきているように見えます。
今作、主人公が潔癖症であることが結構な肝になると思っています。
潔癖症の原因として、薬がただの安定剤だったのに主人公が効果を感じていたことから、精神性と考えられます。おそらく、詐欺をすることに心の奥底で罪悪感、後ろめたさがあったのでしょう。
薬の効果と思っていたのは、娘と過ごす、普通の父親でいられる時間に癒されていたところもあると思います。
潔癖症を治すには、完全に詐欺から足を洗う必要があります。
そう考えると、フランクは相棒である主人公を後腐れなく更生させるために、今まで人を騙して得たお金を奪ったとも考えられるわけです。作品の幅が広がりますね!
また、悪人が何の犠牲もなくただハッピーエンドを迎えるのは私個人としては、あまり良い印象を受けません。今作は騙していた人間が騙され、お金と娘を失う。そしてささやかなハッピーエンド。
アンジェラが主人公を「悪人ではないけど善人でもない」と称していましたが、まさにそんな彼にぴったりの終幕だったと思います。