マッチスティック・メン : 映画評論・批評
2003年10月1日更新
2003年10月4日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
リドさま映画はリドさま主役が基本だけど
「もっとも大切なのはいい脚本」。そう言うリドリー・スコットだが、その作品の多くはやっぱりビジュアル。酷いときには、役者さえそのビジュアルの一部にされてしまう。
が、そんな徹底こそが魅力であり、彼の映画を愛する理由でもある。つまり<主役>をはるのは常にスコットが好ましいわけだ。
ところが、この映画はそうはいかなかった。潔癖症の詐欺師ロイことケイジがハバを効かし、娘役のローマンと絶妙なコンビネーションを見せる。彼らのあいだには父子らしい空気が流れ、それが何とも微笑ましい。そう、気がつけば、これがスコット映画だということを忘れていたのだ。
こういうのは、もしかしたら初めてかもしれない。確かにコン・ムービーであり、その面白みも十分ある。しかし、一番騙されたのはフツーのドラマを、ちゃんと役者主演で撮ったスコットの手腕というか奥ゆかしさ。これって、“サー”をもらって余裕が出来たのか?
ちなみにリドさまは私生活ではすっごい潔癖症。まるで自分が作る映画みたいに、周囲をきれいに整えているという。その予備知識をもって潔癖症のケイジを見ると、おかしさが倍増。リドさま、家でも掃除ばっかりやっているのかなあ。
(渡辺麻紀)