恋の骨折り損 : 映画評論・批評
2000年12月15日更新
2000年12月16日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー
優等生ブラナーが頑張る“もどき”ミュージカル
女人禁制で学問に燃えることを誓うプリンスと学友たちがうたい踊る冒頭、ネクタイをベルト代わりにした青年たちの姿は、まごうことなくフレッド・アステア印。しかも流れる曲は、コール・ポーターやガーシュインのスタンダード・ナンバーときている。監督&出演のケネス・ブラナーはじめアリシア・シルバーストーン、アレッサンドロ・ニボラらダンス&ソングに関しては素人同然の役者たちが、一生懸命にうたい踊る姿は「スター隠し芸」的ではあるが、ウキウキ感たっぷり。フランス女王に扮したアリシアなんて、ポッチャリ体型にもかかわらず網タイツ姿を披露している。つまり、これはハリウッド・ミュージカルへのオマージュがつまった“もどき”ミュージカルなのだ。
ロイヤル・シェークスピア劇団仕込みにして、<オリビエの再来>と呼ばれた優等生ブラナーがウッディ・アレンの影響を色濃く受けて作り上げた本作は、「俺ってこんなこともできちゃうんだぜ」と言わんばかりの異色作。遊び心で作ってみました、というブラナーの頑張りがモロに見えるが、その野暮さもラブリー。アレン作品の小粋さに息苦しさを覚えた経験のある人ならば、ブラナーのダサダサ感がチャーミングに感じられるはずだ。
(山縣みどり)