「非常に狭いある意味で良作」ローレライ Chuck Finleyさんの映画レビュー(感想・評価)
非常に狭いある意味で良作
アマゾン・プライムで再鑑賞。原作のことは知りません。
こちら確かに封切り当時お金払って劇場で見たはずですが、なぜか0.5シーンくらいしか覚えていない。批評も悪いので、あまりの酷い出来に観た記憶の「抑圧」が起きたのかと正直また観るのが怖かったですが、結末まで頑張りました。
感想としては、事前に他の賛否のレビュー等を読んで「心構え武装」したこともあり、思ったほど酷くありませんでした。それは
「本作はWWII舞台の戦争映画などではなく、異世界日本の架空ファンタジー戦記」
「”宇宙戦艦ヤマト”ならぬ“海中戦艦ローレライ”」
「批判的視点を持たずカッコよい筋・場面のみ追え!」
ということです。
そう思って観れば、主要キャストの大げさな熱演にも、ヒーロー・ヒロインの古代進・森雪的な役どころも、また一方で官名呼称や操艦表現が妙に史実・軍事的なのに時系列や社会政治視点(まぁ本来ココこそしっかり描くべきですが‥)がグダグダというかいーかげんな脚本にも大した矛盾を感じず、ミリタリ調SFアニメ的なお話しとして楽しめます。
その上で好印象は‥
・役所公司(カッコイイし、映画の趣向と自分の役どころよく分かってそう)
・石黒賢(色々矛盾したヘンな役だけど目力で頑張った)
・國村隼、小野武彦(マンガキャラみたいな役を熱演)
・堤真一(なんだろう、この人こんな“日本しね”みたいな役ばかり。隠れた嶋田久作の後継者か?)
・香椎由宇(凄いキレイ。台詞はもっと少ない方が良かった)その他の役者さんも貶すものではありませんが…まあいいや。
・明暗撮影、セリフ音声、シーン展開テンポ(この三つは、シロウト洋画好きの私がほば毎回偉そうに邦画に文句を言うところですが、今回はあまり悪目立ちを感じませんでした。素晴らしいと思います。
・ロタ島(米軍上陸戦の無かった稀有な日本軍拠点)避難
まあまあ‥
・CG、戦闘シーン(総じてチープですが、上述のようにSFアニメ・架空戦争と思えば大丈夫。ちょっと舞台群像劇っぽい日本兵の動きも、対する米軍の皆さんの緊張感ある手慣れた戦闘シーン演技に大いに助けられてます)。
それでも気になったところ‥
・原作や細かい経緯は知りませんが、映画冒頭から「3年前(→1942年)に特攻に反対して一線から退いた」と言われたら、それはあり得ないだろとは思いますよね。それを感じてしまうと、皆の指摘する原子爆弾呼びやその他の甘い又は蛇足な台詞やシーンも気になってしまいます。
・佐藤隆太の役、シーン(無意味、不要)
・柳葉敏郎の役(得意の目力と全身演技で頑張りましたが、過剰)
・妻夫木聡、とその役どころ(コスモタイガー隊の存在しない古代進な役。居なくても支障ない)
あとこれに、意図不明で意志薄弱な反乱グループとか、東京原爆の目的(米政府がローレライ程度で確約するとはどうしても思えない一方、反乱側に意図があるなら国体消滅←皇室せん滅、以外あり得ない。が半端にヘタレて?劇中一言の言及も示唆もない)など言い出したらキリがないのですが、同時代〜最近までの他の多くの「日本壊滅・転覆するぞ映画」(その多くで堤真一暗躍)の中ではマシな方かと思います。
そして、更に幾つものアラやヌケを敢えて見過ごして辿り着く結末〜〜〜ファンタジーですね!
もし戦場リアルであれば、
おふたり‥ フツーに遭難して艇内でミイラ、良くて米軍捕虜となって秘密研究所送り(回天+α程度性能の潜航艇では敵地テニアン以外目指せる陸地がない、分離すること自体が死刑宣告)
皆さん‥ テニアン基地防護及びB-29直掩のP-51辺りに浮上直前からボコボコに撃たれて乾坤一擲の20サンチ砲を撃つ暇もなく大破、取り囲んだ米艦から飽和砲撃を受けて白旗揚げる間も与えられず撃沈(敵潜水艦が戦闘中急浮上して重要任務の友軍機を砲撃撃墜したのですから、直後に投降されても受け容れる理由がない)
でしょうか。まあ観ている私は失望なんかしません、すでに達観していますので大丈夫です。
でも… 同じ娯楽戦争映画でも、私の好きなプラトーンや西部戦線異常なし、怖い戦争のはらわた、楽しめるMASHやグッドモーニング・ベトナム、リアルなブラックホーク・ダウンやグリーン・ゾーン、ファンタジーなバトルシップ、完璧な娯楽映画トップガン・マーベリック、そして米監督による日本戦争映画・硫黄島からの手紙…
そんな数々のアメリカンでグレイトな映画と比べて、本作のような日本の戦争映画には、結局何もしっかりした信念、理念や史実的物語作りへの怜悧さが見えないんですね。そこはやっぱり残念。キレイな歌声とか聞かされても、なんの救いにもならない。