「別作のローレライ…?」ローレライ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
別作のローレライ…?
公開された2005年は終戦60年で、戦争を題材もしくは意識した作品が多く公開。
その内3本が、福井晴敏原作作品。
本作は“2005年福井軍事アクション祭り第1弾”!…とでも言うべきか。
第二次大戦下の1945年。
広島に原爆を落とされ、窮地に陥った日本は、国家存亡を懸けた奇襲作戦に出る。
ドイツから極秘入手した潜水艦“伊五〇七”に乗って、海軍の絹見少佐以下寄せ集めのクルーたちが出撃する…!
邦画には珍しい潜水艦アクション。
細かい事や小難しい事は抜きで、とにかくアップテンポ。
開幕して早々と任務へ。海へ。
米海軍とも一戦交える。
この時“伊五〇七”は驚異的なシステムが備わっている事が分かる。
それが、“ローレライ”。
敵の位置/形が正確に把握する事が出来る。
現代みたいにレーダーやコンピューターが発達していない時代にどうやって…?
実はこの“ローレライ”、一人の少女を媒介した人間兵器であった…!
本格的な潜水艦映画かと思いきや、突然のSFチックに。
この奇襲作戦の本当の目的。大本営/艦内でクーデター。
苦難を乗り越え、深まる寄せ集めのクルーたちの絆。
その中で、仲間や艦の為に犠牲も…。
一兵と少女の仄かなロマンス。
敵国にとっては“魔女”と呼ばれた少女。
が、クルーたちにとっては少女の歌声や存在はほんのひと時でも癒しに。
平成ガメラシリーズなどの特撮演出で高い評価を得た樋口真嗣の監督デビュー作。
最高のエンタメを作ろう!…と、たっぷりの要素を詰め込んで、詰め込み過ぎたようだ。
“ローレライ”や米海軍とのバトルだけでも巧みに詰めれば上々であったのに、クーデターまでは欲張り過ぎ。もっと話に深く関わるかと思ったら、中盤だけで呆気なく終わったし…。
特撮演出で鳴らしてきた樋口監督だが、本作のCGはちと粗い。
役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、佐藤隆太、堤真一…主役級のキャストによるアンサンブルは見ものだが、ちとオーバー演技。
『シン・ゴジラ』の演出で絶賛された樋口監督だが…、でもあれはやはり庵野監督のリアリティーの手腕であって、それまで樋口監督単独の演出は何と言うか…、
言うなれば、演出も演技も展開も作風もヴィジュアルも、アニメ風戦争潜水艦アクション。
つまらなくはない。
つまらなくはないんだけど…、
昔劇場で観た時はもっと面白かった筈だった。
なのに、今回久々に見たら途中「…」と感じたり。
記憶違い…?
それとも昔、別の作品見たのかなぁ…?
樋口真嗣監督は資金に合わせてグレードダウンも厭わない、よく言えば職業監督な性格が強い仕事の仕方と聞きますが、シン・ウルトラマン以外はどれも確かにそんなクオリティではあります。
とはいえ、原作の「終戦のローレライ」も福井晴敏作品としてはそれほどパワフルでもなかったので、やむなしかもです。