「映画自体がバンドのような映画」リンダ リンダ リンダ しゃぐまさんの映画レビュー(感想・評価)
映画自体がバンドのような映画
何かしらのコンペティションに出るわけでもなく、プロを目指してるわけでもない。文化祭の為だけど出場しないという選択肢も余裕であった。舞台は下北沢とかじゃなくて地方。そしてボーイズではなくてガールズバンドなのでモテるためにやるというモチベもない。だから、観ている人は何かしらの結果や成果を期待するのてばなくて、画面で今起きている事に集中できる。
生徒会か何かの、文化祭の撮影の冒頭から、それがメタ視点に切り替わって本当の冒頭、横移動するカメラの長回しで女子高生(山田)が廊下を走るのを追う。
その途中途中で通り過ぎる教室の中の誰かと話す中「短気っていうか気が短いっていうか」みたいな台詞が聞こえて、クスッと笑ってしまう。劇中所々山下監督の上品なユーモアが、山下作品おなじみのW山本や、甲本雅裕、三浦誠己、ペドゥナという素晴らしい俳優のレベルの高い演技によって表現されているので、かなりの安心感がありバンドで例えたらドラムやベースのよな役割をしていたと思います。その上での前田亜希や関根史織や他の素人っぽい演技はマイナスに働くどころか妙なリアリティを感じよかったです。
もし突き指してなかったら、もし気の強い二人の片方が空気を読むタイプだったら、もしジッタリンジンのケースにブルーハーツを入れるテキトーなやつが居なかったら、もしソンちゃんが最初にあそこに現れなかったら、奇跡のような時間は生まれていなかったかもしれません。
バンドを、誰かの為や自分の利益の為にやっているわけではなく、強いて言えば音楽の力。だから夜の部室で集まっても一人ギターしたり、ケータイいじったり、耳ほじったりしてる。そんな安心な空間でソンチャンは何を感じたのか、一人部室を出て誰もいない学校敷地内を(おそらく秋の涼しい空気を感じながら)歩き一人言、一人芝居をしながら歩く。私はココで涙が溢れてきました。この後の部室での演奏を含めあのシークエンスがあればもう最後のシーンは蛇足だと思ったくらい素晴らしいと思いました。
20年ぶりに観て同じかそれ以上に良かったです。
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