劇場公開日 2025年8月22日

「青春映画の金字塔、奇跡の一本。その通り!」リンダ リンダ リンダ ノンタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5青春映画の金字塔、奇跡の一本。その通り!

2025年8月26日
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鑑賞方法:映画館

初公開から20周年を記念しての上映だという。舞台は2004年、公開は2005年。
当時、僕は二度目の転職をしたばかりで下北沢に住んでいた。コインランドリーの前のお好み焼き屋、その壁にこの映画のポスターが長いこと貼られていたのを覚えている。だが結局観なかった。ブルーハーツはすでに懐かしのカラオケソングだったし、キラキラした青春映画を観ようと思う気持ちが動かなかったのかもしれない。

それが今日、60歳になってはじめてシニア割引で観る映画として選んだのがこの作品だった。久しぶりに訪れた渋谷、駅ビルの2階から上がら消えていてびっくり。

映画は予想に反して、地味で控えめだった。青春映画にありがちな友情や挫折やケンカなどで、ドラマを盛り上げようとせず、演技も演出も抑制されている。普通なら「ここを描くだろう」という場面も、場面転換して見せない。
言葉がわからないから、なんとなくバンド参加への誘いを「はい」と引き受けたペ・ドウナがブルーハーツをヘッドホンで聞かされている場面。背を向けた彼女は全く動かないで実は泣いていた。ブルーハーツに感動してしまったのである。心が動いたらやらないわけにいかない。
主人公が目的に向かって動機づけられる重要な場面でも、監督は彼女の顔を映さない。それなのに、いやそれだからこそなのか、こちらも訳もわからず泣かされてしまう。

感情が爆発するのはラストの「リンダリンダ」演奏シーン、そこだけでいいと決めたのだろう。
本番前夜、ペ・ドゥナがひとり会場を訪れる場面はまるで『ロッキー』のようで印象的なだった。とにかくこの映画は出来る限り気持ちの昂ぶりを直接描かない。しかし、その周辺にある、その時にしか写せないであろう風景・情景を印象的に挿入する。それによって「いま、ここ」の一回だけの取り返せない瞬間の物語であると感じさせるし、逆説的だけど、だからこそ普遍性を獲得していると思う。

学園祭のわずか三日間に、この年代の輝きのすべてが凝縮されている。それは僕自身の高校時代とも何も変わらない。だからこそ、20年ぶりにスクリーンに甦ったこの作品は、さらに輝きを増しているのだと思う。

ベースを弾いていた関根史織は、これが最初で最後の映画出演だという。撮影の数年前、バンドBase Ball Bearの小出祐介に誘われて、ベースを触ったこともなかったのに、1年少しの練習でステージに立ったのだそうだ。脇役でありながら、とても魅力的だった。
また、物語の中心に韓国人留学生を置くという設定も大胆で、結構な冒険だったのではないか。そこにペ・ドゥナは見事にハマっていた。
青春映画の金字塔という今回のセールスコピーは、見事その通りですと認めるしかない。監督も自称する奇跡の一本は本当に素晴らしかった。

ノンタ
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