劇場公開日 2025年2月7日

「創意工夫の快作」死霊のはらわた(1981) 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0創意工夫の快作

2022年7月31日
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山奥のペンションを訪れた男女グループが…というベタベタなB級ホラー映画ではあるのだが、演出や撮影や音響に細やかな技巧が凝らされている。

たとえば死霊の乗り移った化け物の腕や頭をぶった斬ると間欠泉のように血が噴き出すのだが、そのときなぜか一緒に真っ白い液体が噴き出る。射精のメタファーともとれるし、化け物がこの世のものではないことの強調ともとれる。何にせよたったこれだけの工夫で作品の奥行きがグッと増している。

カメラワークもかなり凝っている。中でも面白かったのは、化け物の視点でPOV的にカメラが動作するというアイデア。カメラが化け物となって主人公たちに這い寄り、襲い掛かるのだ。これによって主人公たちが恐怖するさまを受け手はよりリアルに感じ取ることができる。化け物が木や草を薙ぎ倒しながら森の中を疾駆するシーンはけっこう怖かった。

音響も緩急のメリハリがしっかりついており、終盤の無音シーンなどは邦画ホラー的な静謐の美学さえ漂っていた。

低予算なのにスゴい!という褒め方はあんまりしたくないけれど、かくも最小の操作で最大の効果を誘発することができている映画はそうそうないんじゃないかと思う。創意工夫のよき温床として、やっぱりホラーというのはあらゆるジャンルの中でもかなり特異な地位にあるのだということを改めて認識させられた。

因果