「人類をはるかに凌駕する知性体の描き方」光の旅人 K-PAX かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
人類をはるかに凌駕する知性体の描き方
主演ケヴィン・スペイシー&ジェフ・ブリッジス。
SFヒューマンドラマ。
【ストーリー】
精神科医マーク・パウエル(ジェフ・ブリッジス)が勤務する病院に、身元不明の自称宇宙人・フロート(ケヴィン・スペイシー)が送られてくる。
フロートは知性豊かで心理的にも非常に落ち着いていたが、自分が宇宙から到来した知性体であると強固に主張していた。
妄想患者にありがちな破綻の見当たらないフロートの主張に興味を覚えたマークは、専門家を読んで彼の発言の真偽を当人の前で確かめさせる。
驚くことにフロートが故郷と主張するK-PAXなる星系は本当に存在し、そして専門家も解析できていなかった未知の重力源による光度の変化にも言及する。
マークはフロートの過去に迫り、その来歴を探るのだが……。
第五種接近遭遇、いわゆる地球外知的生命体とのファーストコンタクトものSFです。
コンタクトするのは知性体そのものではなく、それが宿った人間という描き方はロン・ハワードの『コクーン』あたりが有名でしょうか。
こういった方法が取られる理由の一番は、真正面からの物理的接触となると予算が大きくなったり子供だましっぽく見えたりというリスクを排除できる事。
もう一つの理由は、観測者から見た人類が語られるというプロセスにより、人間の心奥に迫るドラマを作れる事でしょう。
ロバート・ゼメキス監督、カール・セーガン原作の『コンタクト』も、人間を遥かに超越した者として主人公の記憶から創られた空間でのコミュニケートを果たしました。
『2001年宇宙の旅』も、やはり人類存在の内面への旅という形です。
心に強く関心を持つ大人向けの作品群になりますが、ただこれらの手法はいじわるな言い方をすると、映像作品としては「逃げ」の作り方で、知的生命体の詳細な設定や壮大な絵を必要としないので、逆説的に『未知との遭遇』や『ET』を撮ったスピルバーグの突出した映像作家としての才能や、エメリッヒの『インデペンデンス・デイ』を作ったエンターテイナーとしての覚悟を証明してしまっているのもまた事実です。
宇宙人、自分が見たいだけなんですけどね。
もちろん設定や脚本はきっちり作り込まれており、人類に乗り移った知性体という難しいキャラクターと取り巻く世界をケヴィン・スペイシーやジェフ・ブリッジスが作り上げており、感動体験の方も充実させてくれますのでご安心を。