光の旅人 K-PAX : 映画評論・批評
2002年4月2日更新
2002年4月13日より日劇3ほか全国東宝洋画系にてロードショー
“心の問題”にテーマを絞った癒し系SF
ある日、宇宙人を自称する相手に遭遇したなら、電波系かフシギ系のヒトと考えて、まず間違いない。ケビン・スペイシー扮するプロートも、K-パックス星から光エネルギーに乗って地球に旅してきたと主張したから、当然、精神科の病棟に送られる。ところが、治療にあたった医師のパウエル(ジェフ・ブリッジス)は、プロートの証言が理路整然とし、なおかつ天文学的に裏付けられるのを知って驚く。一方、プロートと触れ合った他の患者たちに精神の回復が見られるという奇妙な現象も起こっていた。はたしてプロートは妄想患者か、本物の宇宙人なのか?
ジーン・ブルーワーの原作「K-パックス」は、同じような設定の安部公房の「人間そっくり」に似て、哲学的アプローチを試みているが、映画はもっと“心の問題”にテーマを絞り、癒し系SFに仕上げている。同じく自称宇宙人と精神科医を主人公にしたエリセオ・スビエラ監督のアルゼンチン映画「南東から来た男」(86)を見た人には物足りないかもしれないが、丁寧な描写を重ねて、プロートの正体を観客の判断にゆだねる点も好感が持て、さわやかな感動を呼び起こさずにはおかない作品である。
(高橋良平)