親切なクムジャさんのレビュー・感想・評価
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復讐の果てに得たものは?
パクチャヌク監督作品はオールドボーイが初。正直あまりあわない作風だなあと当時感じた(ファンのかたはごめんなさい)
パッケージの女優さんきれいやな〜と前から気になっていた。たまたまWOWOWで観られることになり鑑賞。
雰囲気はやはり独特。カラーが強い。
あまり好きな世界観ではないのだけれど、クムジャさんが最終的にどのような復讐をするのか最後まで頑張って見守ることにした。
強い復讐心を持ち13年計画をあたためてきたクムジャさんの執念は理解したけれど、被害者遺族たちの心理を利用して復讐を果たした時点で共感できなかった。被害者遺族にも手を下す権利はあるからというクムジャさんの配慮もあったのかもしれないが。
最後のシーン、復讐の果てに見たものは…あまりにも救われない現実。子どもが母の背中で3回数えるシーンが印象的やった。
天使
OPから、もう傑作の予感もりもり。
白く滑らかな画像を黒い線が這い手に腕に伝いながら赤い花を咲かせつつ瞳のアイシャドウへ、そこから涙。
出所するクムジャさんは真冬の中、逮捕されたときのままの薄手のワンピースで黒く強い瞳でカツカツ歩く。
宣教師の白い人生をと差し出された豆腐を払いのけ落ちるのはシンバルのバシャーンという音。
この作品はそんな演出や幻想などがところどころに散りばめられているのでドキドキする。
刑務所の中で誰にでも親切だったクムジャさん。
言葉で、行動で、命をかけ、殺人を犯し、人々に親切をし復讐の為の駒を作り上げる。
濡れ衣を被せたパクに復讐するために様々な物を用意し、彼の同僚として人を送り込み、美しい妻を宛てがう。
全ての人々がクムジャさんの親切と優しさ、暖かさにまるで宗教の様に集い命令を遂行する。
赤いアイシャドウ、赤いヒールを履いたクムジャさんは親切ではなく多くの駒を持った復讐者となる。
パクとの子供の行方を追いオーストラリアまで行くも愛されて育ったジェーンは韓国に行きたいと着いて来てしまう。
パクを拉致し、これから拷問かな?と思っていたら足を撃ち抜くだけだったので少し物足りなさを感じたが、実はパクを捕まえなかった故に他にも子供も攫われていた事が判明。
計4件。
その家族を招集し、子供達の悲惨なビデオを観せる。
そして選択を委ねる。復讐するか、警察に渡すか。
この時「ヨット」のワードでゾワリと涙が出た。
少しダルいかと思ったけど、常識的に考えれば人を傷つける、殺すなど抵抗があるに決まってる。私だって嫌だよ。誰もが怯えながら武器を取る。
最後、ビデオを観て倒れたおばあさん。誰もが血飛沫を浴びぬ為ビニールを被っていたが1人気丈にも中に入り、首に一本のハサミ。それには孫の名前。
皆で後片付けをし、皆でケーキを食べる。
黒いケーキには赤い蝋燭。
犯人を殺しても子供は帰ってこない。その一連の行動はとても虚しく写った。そこに天使が通る。
赤いアイシャドウを拭き取り歩くクムジャさん。
ジェーンに白いケーキを渡し、白く生きてと。笑顔のジェーンはクリームを笑顔で舐めそのクリームをクムジャさんへ。
口を開けないクムジャさん。白く生きていけないのだ。
どんな思いでケーキに顔を埋めたのか。
白く生きたい思いなのか、悲しみなのか。
ジェーンのくだりとか全体的に少し長いかなとは感じたけどクムジャさんの人生を語るにはジェーンは欠かせない。
パクをスピーカーにしてジェーンに思いを伝え、3回以上謝ると言えたのが良かった。
真っ赤なアイシャドウとシスターフッド
パク・チャヌクの復讐三部作のファンなので、久しぶりに再鑑賞しました。初めて鑑賞した時に思わなかったことなのに今回再鑑賞して思ったことは、クムジャさんは女性の怒りの象徴であり、真犯人は韓国家父長制度(男性優位社会)の象徴なのではないかということでした。本作はシスターフッドを描いたフェミニズム作品なのではないかと。
クムジャさんは刑務所の中でシスターフッドの中心的な人物でした。かつての聖母は、出所後に抵抗の色である真っ赤なアイシャドウを塗り、拳銃を手に入れて復讐を誓います。そして児童達の父母にも壮絶な復讐の権利を与え、実行するという実に勇ましい行動を取ります。我が子を殺害された父母をみても、母の方が俄然肝が据わっていましたよね。
そもそも真犯人の思考そのものが家父長的で、家父長が行き過ぎると弱い者への殺人も厭わなくなるというのを示唆している様に感じました。家父長制の本質にあるのは暴力なんですよね。
暴力に対してはきっちりと暴力で裁く。復讐者の虚しさは復讐者が感じるものであり、第三者が指摘するものではない。だからラストシーンでは、観客の感じ方も様々になっていると思います。
本作が上映された約20年前は世界的に現在と比較して女性差別が強く、本作の様なシスターフッド的な作品は欧州や欧米でしか発表されてなかったか、ほんの少ししかなかったと記憶しています。そんな時代の中、シスターフッドが韓国作品でしかもバイオレンスというのが驚きでした。前衛的な本作は今の韓国エンタメの盛り上がりの予兆を感じさせくれます。やはり、時を経て再鑑賞した作品は、まさかな発見がありますね。
復讐を果たした先に…
心の救済は無かった。死んだ人は帰ってこないし、後悔は消えない。これが言いたかったことなのだろうか。イ・ヨンエの清廉さとグロい復讐のギャップが本作の見どころ。冒頭は時系列が飛ぶシーンや幻想的なシーンもあり、このあたりが鬼才パク・チャヌクの手法なのだろうが、好き嫌い別れると思うし、個人的には分かりにくく、好みではなかった。
面白くなるまでに時間がかかるスロースタートな映画
序盤は時系列がコロコロ変わり、登場人物も多く相関図が分かりづらくて混乱した。さらにテンポも悪く中盤までは退屈。全体像が見えてきたのが終盤で面白くなるまでに時間がかかるスロースタートな映画だった。
演出面は音楽と人物を舐め回すようなカットが多くてくどい。オシャレな感じを出してる感が苦手かも。単純に韓国映画特有のゴリゴリの復讐系を期待してたから自分には合わないなー。
最後の処刑シーン、被害者たちでゾロゾロ殺しに行くのはシュールで面白い。警官がナイフの使い方教えたり、順番待ち中に身代金の話をしたりリアルに感じた。緊迫感あるシーンなのにコントっぽく見える。シリアスとコメディの絶妙なライン。
パクチャヌク、えげつない。
異次元だよ、この人。
悲劇の極冠だと思う
あのラストシーン、誰が思い付くよ。
周りを真っ白にしていく中で、
クムジャさんだけが白くなれず、
むしろ漆黒に染まってしまって、
もう手の打ちようがないのよな…。
けれども周りはそんな彼女を天使のように
見ているという。
こんな皮肉あるんかいな。
あと、心臓が悪いお母さん。
なに彼女の顔。もう最高だったんですが。
笑ってしまうくらい、怖かったよ。
韓国映画って音楽もいいのよなあ…。
あの曲が流れるだけで、作品のクオリティを上げるというか、高貴なものとさえ思えてくるのよ。
あと演出というのか、カメラ割というのか。
すべてに凝っていて、ワンシーンワンシーンが
贅沢なんですよ。
もうパクチャヌクだいすき。
また絶対映画作ってほしい。
なんだろう。
魅力的な人物作りがうまいのか、
それとも飽きさせない展開がうまいのか。
わからんな、全てが魅力だな。
余計に語らないのも、また良いのよ。
いや、にしても…
クムジャさんの魂は救われなかったか…。
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