劇場公開日 2006年8月26日

キンキーブーツ(2005) : 映画評論・批評

2006年8月15日更新

2006年8月26日よりシャンテシネほかにてロードショー

「自分らしく生きる」ためのヒントを楽しく示す

「自分らしく生きたい」──言うのは簡単だが、“自分らしさ”が何かを見いだすことは結構難しい。だが、倒産寸前の靴工場がドラッグクイーン用のブーツ作りに活路を見いだすユニークで微笑ましい実話をもとにした本作は、そのためのヒントを楽しく示す。それは、自ら縛っていた心を解放できれば、笑顔で生きられるということ。そうすれば自分らしさは自ずと見えてくる、と教えてくれる。

当初、登場人物たちは窮屈に生きている。チャーリーは父親への負い目から自分に自信を持てず、恋人の言いなり。ローラは女装のときは自信満々だが、自分をごまかしているため、男の姿になると意気地なし。靴工場で働く職人たちは、仕事は仕事と割り切っていて伸び伸びと腕を振るえない。そんな誰にも覚えがあるさまざまな弱みを抱えた人々が出会い、偏見や思い込みを払拭して心を通わせたとき、みな生き生きと輝きはじめるのだ。

確かに、ローラに扮したキウェテル・イジョフォーがいい味を出し、歌もダンスも華麗にこなして目を引く。しかし、周囲の人間模様もさりげなくポイントを絞って描き(役者たちもうまい)、思わぬ感動を生み出すことに成功している。しゃれた言い回しに加え、人生に対する含蓄あるセリフも随所にあり、実生活に役立てられそうなのもうれしい。

山口直樹

Amazonで今すぐ購入

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む
「キンキーブーツ(2005)」の作品トップへ