亀は意外と速く泳ぐ : 映画評論・批評
2005年6月15日更新
2005年7月2日よりテアトル新宿にてロードショー
胡散臭さとくだらなさが心地よい
バラエティ番組「トリビアの泉」の構成作家としても知られる三木聡監督の長編第2弾。先に公開された「イン・ザ・プール」は、松尾スズキ演じる精神科医の暴走ぶりで観客を笑いの渦に半ば強制的に巻き込んでいったが、今回はタイトルにもあるが日常の些細な出来事も、ちょっと見方を変えればこんなに楽しい!というトリビア的12「へぇ」ぐらいの、軽い笑いのジャブの応酬で観客を映画の世界に引き込んでいく。
暇を持てあましていた主婦スズメ(上野樹里)が、転んだ拍子に見つけた5ミリサイズのスパイ募集ポスターに目を留めたところに始まり、のほほんと暮らしている町の意外な連中が、実は“ある国”のスパイであったというありえねぇ~展開。作品全体を覆う胡散臭さとくだらなさが、ささくれ立った世界にどっぷり浸かっている人間にとっては非常に心地よい。
「~プール」同様、キャスティングが素晴らしい。スズメを雇う“ある国”のスパイに岩松了とふせえりが絶妙なボケとツッコミで夫婦役を演じれば、画面に映った途端に笑いを誘うスズメの父に岡本信人など、画面の隅々まで細かい笑いがいっぱい。強烈な脇役に囲まれた分、主演の上野がかすんでしまったのは残念だが、樹里っぺはまだ19歳。将来有望なコメディエンヌの、今後の大きな課題ということで、ひとつヨロシク!
(中山治美)