過去のない男のレビュー・感想・評価
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アキ・カウリスマキの不思議な魅力
敗者三部作の2作目。この作品について何を書けばいいか分からない。
ただ言えることは、身分が分かったあと妻と再会したときに妻とは離婚決定のような状態だったことに心底ホッとしたことだ。
主人公の過去に妻や子どもがいるかもしれないと考えてはいたけれど、気が付けば今見ている現状が続くことを願っていた。
ホームレスだし、やっと仕事は見つかったが、全く幸せとはいえない現状だとしても、作中の主人公は幸せそうに見えた。だからそれが終わらないでくれと思った。
アキ・カウリスマキ監督の作品を観るのは3本目。これまでの鑑賞で、どうやら自分はアキ・カウリスマキの作風が好きなようだと気付いた。
その中でも(とはいってもまだ3本目だが)本作は特に気にいった。
じわじわ来るおかしみ
ヘルシンキに到着した男が暴漢に襲われ、記憶喪失になってしまう。親切な一家と救世軍の女性イルマの世話で、仕事を得て何とか生活できるように。彼はイルマに惹かれるようになって。
監督が描くいつものとぼけた感じと使われるムード歌謡に、じわじわ来るおかしみがクセになります。クレージーケンバンドの曲も使われていて、監督がファンとのこと。ハンニバルという名の”猛犬”が、とても人懐っこいのも楽しい。結局記憶が戻らないけど、元の自宅に帰ることができる。しかし、その後の行動が良かった。「トータルリコール」を思い出しました。
そうなのかぁ、、、
アキ・カウリスマキ監督作品の魅力に、どっぷりハマってます。
怪我をしていて、記憶がないと言えば、まず警察でしょ…と思いつつ、でも観ていたら、警察の何と酷い事か!でも、今の日本も、、、
見捨てられているのに、見捨てない人々は尊い。だんだんと気力を取り戻して行くさまも良かったです。愛の力は大きいと思いました。
『この世では神の慈悲ではなく自力で生きねば』
『この世では神の慈悲ではなく自力で生きねば』
『救世軍』と言えば、高校の時、500円を拾った。さぁどうしたものか?一緒にいた友達が『救世軍』だったので、警察に届けず『なんとか鍋』に寄付をした。つまり『救世軍』に寄付をした。僕はその友人をののしった。それから一ヶ月は経過しなかったと思う。その友人と帰宅途中、誰もいない野原の真ん中で、別の高校のク●ガキにカツアゲされた。お金を持っていたのは僕で、その金額が500円だった。『救世軍』の友人に『ありがとう』ってお礼を言われた。50年近く昔の話なので、詳細は確かでないが、事実である。
さて、『救世軍』の音楽だって良いよね。ポール・マッカートニーの曲で好きな曲もう一曲あった。『夢の旅人』だ。この曲を聞くと、『兼六園』を思い出す。小型カセットに録音したその曲を聴きながら、金沢の街を歩いたのを思い出す。そして、何故か、その時には行っていないが後になって行った『東尋坊の崖』と『夢の旅人』に出てくる『キンタイア岬の崖』が重なって記憶に焼き付いている。
曲調は救世軍である。
独特
十数年ぶりに鑑賞。
なんか、コンディションの問題なのかわかんないんだけど、初めて観た時よりも、わー独特だナー、、と感じました。
ただ単に登場人物がみんな良い人でほっこりするっていうユートピア的な世界ではなくて、ちゃんと善玉悪玉まざってるんですよね。比率的には、善玉多め?
最初に主人公を介抱してくれる、海辺のプレハブ小屋に住む夫婦の奥さん、特に良い人。あらすじには「極貧」て書いてあることが多いんだけど、子供二人いて旦那の仕事週2っていうけど旦那がヘソクリでビール飲む余裕あって、って、極貧か…? 恵まれてるの、旦那の仕事もあるし。って本人も言ってるし、どっちかっつーと治安が悪くて失業率が高そう、街全体の。見てると。
でも定食屋?カフェ?の人とか、優しい。こういうとこに、のどかさが出てるのかな。
超、金にがめついおっさんが飼ってる犬(メスなのに名前がハンニバル)が、かわいい。ハンニバル超かわいい。もっとハンニバルのシーン増やしてほしかった(笑)
そのがめついおっさんからかなりな額で借りてるプレハブ小屋を、いつ立ち退きになるかわかんないのに綺麗に掃除して、直してもらったジュークボックスも置いてカスタマイズする主人公。拾った?冷蔵庫をテーブル代わりに、海辺のおっさんと修理工の兄ちゃん?にスープを振る舞う主人公。男3人が黙々とスープを啜ってるだけなのに、なぜだろう、面白い(笑)
そして小屋の近くにタネイモを植えて芋畑をつくる主人公。
化粧っ気の無さそうな救世軍のイルマが、主人公にほっぺチューされた後、慣れない化粧品をおずおずと試してみるシーン。いいっすね。
爆笑する感じではないし、登場人物たちも大体みんな真顔なんだけど、なんかクスッと笑えるシーンが都度、ある。
記憶喪失は大変だが、その後も、ものすごいドラマが、起きそうで起きない。起こったと思っても、あっという間、あるいは、あっけない幕引き。でも、そんなもんかもしれない。収穫した芋を譲る譲らないの交渉をしてるだけなのに、なんか見入ってしまう。神は細部に宿ると言うが、とどのつまり、そういった現実の一大事の連続が人生なんだろうね。なんつて。
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