劇場公開日 2003年3月15日

「人の善意を信じ希望を謳うカウリスマキの傑作」過去のない男 エロくそチキン2さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人の善意を信じ希望を謳うカウリスマキの傑作

2024年5月2日
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鑑賞方法:映画館

これはカウリスマキ作品の中でも最上位の部類に入る逸品。

夜行列車でヘルシンキに着いた男は、暴漢に襲われて重傷を負い、極貧の一家に拾われて命は取り留めるが記憶喪失に。日雇いをして暮らすようになった男は、炊き出しなどを行う慈善団体(救世軍)で働く女性イルマと出会い、心を通わせていく。

そう、これは記憶を失い過去をなくした男の人生のリスタートの物語。イルマとのピュアな恋も出色。

環境が人をつくる。記憶を失う前より善き人になれたのは環境によるものだろう。

不況下のフィンランドにあって、人の善意を信じ、希望を失うことなく、より良い社会を模索するカウリスマキ。

いい話は極端に苦手なのだけど、拒否感を覚えることがまったくなかった。カウリスマキ独特の淡々とした抑えた演出がいいんだろうなぁ。

カンヌ国際映画祭でグランプリ、そしてイルマを演じたカティ・オウティネンが女優賞を受賞したのも納得の傑作。

エロくそチキン2