劇場公開日 2001年2月10日

「【緩慢な日常を死が徐々に覆いつくす”回路”は開かれた。ジャパニーズホラーとは、一線を画する奇想天外な黒沢ホラー。】」回路 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【緩慢な日常を死が徐々に覆いつくす”回路”は開かれた。ジャパニーズホラーとは、一線を画する奇想天外な黒沢ホラー。】

2020年9月10日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

難しい

ー黒沢清監督の、平凡な日常に徐々に亀裂が入り、不穏な雰囲気に変容していく独特の世界観が萌芽し、世界(特にフランス)で、その世界観が評価され始めた作品。-

・ミチ(麻生久美子)が勤める会社の同僚が、ある日突然縊死するするところから、この不穏な雰囲気が横溢する映画は始まる。

・”タスケテ・・”という声が響く中、同僚たち(順子、春江(小雪))等が徐々に平静を失い、姿を消し、黒い影もしくはシミとなって現れる・・。

・赤いテープで封印された”開かずの間”の謎と荒廃した工場の風景。人影のない街。

ーそして、ミチは”開かずの間”で”影”により大きなダメージを受けた亮介(加藤晴彦)とともに、死(黒い影)が迫りくる世界から船で脱出を図る・・-

<じわりじわりと、何気なく過ごす人々の日常に侵入してくる異物(幽霊)達・・。
 黒沢清監督の独特の死生観が仄かに提示される作品。この後、黒沢監督はその名を更に世界に馳せていく。
 近年の邦画監督で、世界で活躍する監督は数名いらっしゃるが、当時、私の中では”陽”の是枝監督、”陰”の黒沢監督だと思っていたイメージを作り上げた作品。
 だが、近年「岸辺の旅」「散歩する侵略者」辺りから”陰”という括りでは語れなくなってきた幅広い作品群を制作されるようになってきたことは、万民が知る所である。>

NOBU