劇場公開日 2002年12月7日

アイリス : 映画評論・批評

2002年10月15日更新

2002年12月7日よりシネスイッチ銀座ほかにてにてロードショー

この愛のドラマは「言葉」を巡るドラマでもある

実話をもとにしたこの映画では、アイリスがアルツハイマー病に蝕まれていく晩年のドラマが軸となり、そこに彼女とジョンが出会い、恋に落ちていく若き日のエピソードが挿入される。そのふたつの時代の間には長い空白がある。当然この女性作家の偉業は描かれないが、ここでより重要なのは、恋に落ちた彼らが築き上げてきた関係を直接描くのではなく、前後の時代から浮き彫りにすることだ。

水中で戯れる若いふたりがそのまま老いたふたりに変わる映像は、永続的な絆を物語るが、それはすべてを共有することではない。彼女の病によって皮肉にも彼らが生活を完全に共有せざるをえなくなったとき、その絆の本質が明確になっていく。若き日のジョンは、彼女が他の男とベッドにいる姿すら目にするが、それでも彼女を受け入れる。晩年の彼らが日常的に繰り返す言葉遊びは、お互いを束縛しないための自然な距離を表し、彼女の言葉が失われたとき、その距離が崩壊する。

しかしそれでもジョンには言葉が染みついている。ふたりの親友の葬儀で彼が弔辞を述べる場面は印象的だ。トルストイの小説のユーモアについて語る彼は、完全に浮いてしまうが、その姿勢こそがアイリスを支えるのだ。

(大場正明)

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