劇場公開日 2006年12月16日

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「日本映画の式年遷宮」犬神家の一族 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5日本映画の式年遷宮

2021年1月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

伊勢神宮にはご存知の通り式年遷宮と言うものがあります
20年に一度宮処を改め、古例のままに社殿や御装束神宝をはじめ全てを新しくして、大御神に新宮へお遷りいただく伊勢神宮最大のお祭りとのことです
つまり現在のお宮と寸分変わらないお宮を新たに建てて入れ替わることを20年毎に繰り返し繰り返し1300年以上続けられているのです

平成25年、2013年に第62回目の式年遷宮が執り行われています
次は令和15年、2033年にあります

本作は市川崑監督のセルフリメイク
オリジナルは1976年で日本映画の金字塔として燦然と輝いています
それから丁度30年目のリメイクです

何故、市川監督はセルフリメイクをしたのでしょうか?
それは式年遷宮だったのだと、お正月に本作を観て思い至りました

お宮を作る技術、伝統を後世に永遠に伝える
世代が変わっても技術や伝統が失われてしまわないようにする
式年遷宮にはその意味もあるのだと思います

本作は日本映画の式年遷宮だったのです
21世紀に、俳優、カメラや照明、美術、メイクなどのスタッフ全員の技術と伝統を旧世代から新しい世代への伝承が行われたのです

あたかも30年前に撮られたかのような映像と空気感が濃厚にあります
ですがところどころ現代の空気が 漏れ込んで来て夢から醒めてしまう瞬間があります
監督が意図してしたものと、俳優とスタッフの力量が旧世代に及ばなかったものの二通りです
深田恭子と奥菜恵は監督の意図だったと思います
式年遷宮とえいど微妙に新しい時代の感覚をほんの少し入れていくことも大事なのだということだと思います

豪華な新旧の俳優陣、市川監督の安定した力量、スタッフの頑張り
正にお正月に観るに相応しい映画でした
大いに満足しました

今年はコロナ禍で初詣もままなりません
伊勢神宮に参拝したいものです

本作から30年後は2036年、令和18年
それは今から15年後
今年は本作とオリジナルとの間の30年の年月でいえば、丁度その30年の折り返しの年だったのです

日本映画の次の式年遷宮をやらなければなりません
誰かが「犬神家の一族」をまたリメイクしなければならないのです
その時、一体誰がやってくれるのでしょうか?
再現できるものでしょうか?
技術や伝統は残っているのでしょうか?

あき240