「売れない俳優とその家族の再生の物語を監督であり脚本家である子どもの...」イン・アメリカ 三つの小さな願いごと supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)
売れない俳優とその家族の再生の物語を監督であり脚本家である子どもの...
売れない俳優とその家族の再生の物語を監督であり脚本家である子どもの視線から描いた自伝的作品。娘二人が天使のように可愛い。
長男を失った悲しみを引きずる夫婦。死んだ弟に3つの願いを教えられた姉。家族4人で流れ着いた古いアパートメントには叫ぶ男が住んでいた。ハロウィンの日、心を閉ざし暴力的な生活を続けながら絵を描く男のもとを訪ねる姉妹。心の優しい彼に次第に家族付き合いをするようになるが男は重い病気を患っていた。
時を同じくして妻に命が宿る。しかしその命は身重の妻の命も揺るがす危険性があった。堕胎を進める医者の説得に反し命がけで出産を望む妻。入院費さえ払えぬ日々の中ついに新しい命が生まれる。
心の優しい男は死んでしまうのだが彼は家族の入院費の支払いも済ませていた。別れの挨拶をしないで死んでしまった彼が星になって手を振っているよ。そう妹に声をかける姉と父。手を振りながら死んでしまった弟の名を呼ぶ妹に父は涙する。息子の死を受け入れ癒される家族。後味のよいハッピーエンディング。
この映画が素晴らしかったのは姉妹の自然な演技や家族の絆、無償の愛を実践する男の姿もさることながら幼すぎる姉が語り部になっていることにあると思う。アメリカへの入国時、ぬいぐるみの賭け事、新しい命の誕生。家族の重要な局面で願い事を使う彼女。ほんの小さな彼女が全力で家族を支えていた。私が守ってきたんだから。その告白を聞いて涙する父。
実際に魔法のような願い事が真実かどうかはどうでもいい。この映画がファンタジックな優しさを持ちながらも単なるファンタジーではないリアリティーを持っていたのはこの語り部の視点の妙だと思う。
本当に魔法が効いたのか。子どもの思い込みなのか。真実はもっと深いところにある。彼女が家族を全身で支えていたことに違いはないのだから。そのことがわかるから鑑賞者はこのファンタジーに素直に涙できるんだと思う。いやあよかった。