上海ルージュのレビュー・感想・評価
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チャン・イーモウ&コン・リー、一旦最後のコンビ作
チャン・イーモウ監督の『秋菊の物語』の次作である『活きる』は何らかの事情で日本公開がだいぶ遅れ、その次の本作が先に日本公開された。
1930年代の上海ギャングのボスの愛人であるクラブの歌姫を主人公とした映画で、赤(紅)を基調とした映像など『紅夢』以前に戻ったような作風に僕は「これこれ! この作風だよ!」と喜んだんだが、チャン・イーモウ自身は撮影途中で目指すべき方向性がわからなくなったとのことで失敗作と認識しているようだ。まあ確かに『紅夢』などに内容が少々似ていて、常に新しいものを求めるタイプのチャン・イーモウには新味に欠ける作品に感じられたのかもしれない。
ただ僕としてはチャン・イーモウとコン・リーのコンビに求める最も好きなところが詰まった映画であり、特にこの頃のコン・リーが最も得意とした同情すべき側面を有した微妙な性質の悪女という人物像を過不足なく演じているのが本当に大満足だった。その他の登場人物のキャラクターとそれを演じる俳優たちも文句の付けようがないほどのハマり役で、非常に満足した出来でした。
なお、それまで公私ともに二人三脚と言える形でコンビ作を送り出してきたチャン・イーモウとコン・リーは、一旦この映画を最後として別々の道を歩むことになる。2人のプライベートな関係が終わりを告げたためと言われる。2人の不倫関係(チャン・イーモウには妻〈前妻〉子がいた)は当時は公然の秘密で日本のファンの間でも有名だったが、ファンとしてはそんなことよりも2人のコンビ解消のほうが重大なニュースでした。その後、2人はそれぞれに自身の新たな方向性を見出すため、しばらく苦心の年月を過ごすことになる。
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