劇場公開日 1980年12月23日

「仕事ばかりで遊ばないジャックは          今に気がおかしくなる。」シャイニング Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0仕事ばかりで遊ばないジャックは          今に気がおかしくなる。

2024年9月28日
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鑑賞方法:映画館、VOD

怖い

興奮

感想

telepathyか。目を見るだけで声が聞こえてくる!それはシャイニング(超能力)だ。ホテルの料理長であるハロランはダニーに対面した時に直感する。ダニーは心の内の声として現れるトニーの命令でいつからか未来の事を予知出来るようなった事をハロランに伝える。ハロランはこのホテルに超能力(シャイニング)が滞留してしまう場がある。特に237号室に入ってはいけない!とダニーに警告する。

父親のジャック・トランスは以前は教師であったがアルコール中毒症となり今では小説家を目指す中年男。要領は悪そうで一度言い出すと人の話は聞かない頑固な印象の男。ある日自分の生活環境を変えたいという希望の元、オーバールックホテルの冬期施設管理人の仕事に応募、スタッフ推薦で管理人となり支配人であるスチュアートに挨拶に来る。

スチュアートはホテルの説明をする。場所柄ロッキー山脈の中にホテルはあり人里から離れている。厳冬期は大雪になり管理も大変になる事。家族は孤立する場所に住む事を了解した上での希望なのかなどをジャックに確認する。ジャックは二つ返事で仕事を受ける事を了承する。

スチュアートの話は更に進み、もう一つ話をしておかなければいけないとして、1970年の冬期閉鎖中にこのホテルで惨劇が起きている話をする。スチュアートの前任者がグレイディという真面目な男を冬期管理人として雇った。この男は妻と二人の子供がいたが、管理期間中にこの閉鎖された空間で神経を参らせ気が狂い斧で家族を殺害したという。さらにその死体を西側の部屋に重ねて自分は猟銃を口にくわえて自殺したという話であった。

ジャックはスチュアートの話を聞いても自分にはそんな事は全く起きないので安心してくれと自慢げに語り問題ない事を主張する。まるで魂がその場所に還りたがっているように。あるいは得体の知れないなにか大きな吸引機に自身の記憶が惹きつけられている事を安堵するように。

妻のウェンディは気の小さい自己主張を余りしない人の話に流される印象の女性。一人息子のダニーは明らかに乖離性同一性障害を感じさせる行動をとる就学前の男の子。ダニーはその未来を予知する如く特異な行動から明らかに強力な潜在的超能力を持っており普通の子供ではない。

父親がホテルの面接で採用され暫くした後に電話をかけてくる事。血の濁流が溢れ返るエレベーターホール。手を繋ぎダニーを見つめる青い服を着た双子の女の子。ダニーにはホテルに行く前からその光景が脳裏から離れず記憶されデジャヴとして眼前に現れていた!その瞬間驚愕してんかん症状のような状態で倒れ込むダニー。

ダニーを診た小児科医は小児心理は謎の部分が多く自己催眠のような、自己誘導による一過性の催眠状態が起きているという。医者がダニーの二重人格的な行動はいつ頃から起きているのか。という質問に対して、幼稚園児の頃、酒に酔ったジャックが勢いで弄び肩を脱臼した時からである事をウェンディは告白する。

コロラド州デンバー、ロッキー山脈の山間を黄色のビートルがオーバールックホテルに向けて走っている。ジャックとウェンディ、そしてダニーである。
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彼ら三人と彼らを観ている観客に待ち受ける驚嘆と衝撃の結末。そして絶望的なまでの底知れない恐怖がジャック、ダニー、ウェンディ三者三様の視点を中心に展開していく。超常現象的かつ心理的恐怖感満載の2時間24分間である。

キューブリックの魔術とも言うべき徹底した構図により醸し出されるもはや芸術と言える領域に達している描写と人間が忌諱する周波数波長を曲に仕込んだ不協和音的音楽や音声効果、視覚効果による印象すり込みなど、思わず引き込まれ脱出できなくなるヤバい映画となっている。

本作で多用された撮影視覚効果がステディカムである。画面中央線より低い視点からアングルが捉えられ、撮影効果が最大限に生かされている描写はダニーが足扱きカートでホテル内の廊下走り回るシーンや真冬のガーデンメイズのシーンだ。ホテル内のカーペットもハニカム構造を意識した幾何学的模様柄でそれだけを大画面のステディカムで観ていると酔って頭が痛くなってくるが、映像全体のバランスを持って動画として観ると不思議と色彩的に素晴らしい描写となっている。他にも基本的効果の一つである高速度撮影で描かれるエレベーターホールを覆い尽くす血の濁流シーンや2001年宇宙の旅の最後に出てくるホテルシーン撮影時にも印象的に使用されているが、本作内ゴールドルームシーン撮影時にレンズフィルターと間接照明の効果的な使用による実際よりも部屋の奥行きを深く感じさせる撮影方法など、繊細な撮影テクニックを駆使して映像が創作されており感服する。

原作
スティーブン・キング
キューブリックのデフォルメが強すぎて本作を批判した話は有名。

監督・製作・脚本
スタンリー・キューブリック

配役
ジャック:ジャック・ニコルソン
顔付きからして異常性格者役がハマってる。

ウェンディ:シェリー・デュバル
兎に角この女優さんも恐怖の表情が凄すぎて怖い。
走り方も気持ち悪い雰囲気を出している。

ダニー:ダニー・ロイド
名子役。表情と演技が他の出演俳優に引けをとって
いない。素晴らしい。

ハロラン:スキャットマン・クローザーズ
ミュージシャンだか、本作ではシャイニングを見事に演じきっていた。

うん。怖くて面白い。文句なしの満点。

⭐️5.0

Moi
琥珀糖さんのコメント
2024年10月22日

「インデージョーンズ」に共感ありがとうございます。

この映画は偏愛している映画です。
なんと言っても「展望ホテル」。
立派にもう一方の主役ですね。
ラストのパーティーの集合写真に写り込んでいる
ジャック・ニコルソン。
してやったりのラストですね。

琥珀糖
CBさんのコメント
2024年9月28日

イントロの緻密な描写は、再びこの映画にいざなわれるようでした。

CB