「ホラー史にその名を刻む永遠のマスターピース! 血塗られた歴史は新たな血を求める…🩸」シャイニング たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー史にその名を刻む永遠のマスターピース! 血塗られた歴史は新たな血を求める…🩸
雪で閉ざされたホテルで巻き起こる戦慄の惨事を描いたサイコ・ホラー。
監督/脚本/製作は『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』の、巨匠スタンリー・キューブリック。
原作は『キャリー』の、小説家スティーヴン・キング。
主人公である小説家志望の男、ジャック・トランスを演じるのは『イージー★ライダー』『カッコーの巣の上で』の、レジェンド俳優ジャック・ニコルソン。
今やホラー映画の代名詞とも言える、超有名作品。
エレベーターから溢れ出す赤い水や不気味に佇む双子の女の子、そしてドアの割れ目から顔を突き出すジャック・ニコルソンなど、観たことがなくてもなぜか知っている特徴的なシーンが目白押し。
有名すぎるが故に逆に観ていない映画ってあるじゃないですか。自分にとっては『シャイニング』もその一つでした。
今回満を持して初鑑賞♪
日本公開版(119分)と北米公開版(143分)の2種類があるようですが、今回は北米版にて鑑賞しております。
原作は未読。あまりに原作からかけ離れているためスティーヴン・キングが難色を示したという有名なエピソードがあるので、どれだけ違うのかを確認するという意味でも、原作を一読してみたいな。
さて、本作はホラー映画の金字塔として名高いわけですが、率直に言うと想像していた作品とは違った。
143分という長尺でありながら、決定的な事件が起こるのは後半30分。それまでの約2時間は長い長いセットアップである。
もちろんこのセットアップこそが恐怖を煽るわけで、とても大切だということはわかるのですが、それにしても長すぎやしませんか?もっと狂人と化したジャック・ニコルソンによる殺戮ショーが見られると思っていたのでそこは肩透かし。
にしても、冒頭の支配人によるホテル内部の説明があまりにも親切でなかなかに可笑しかった。
「ここが大ホールで〜。ここが迷路で〜。ここに雪上車が止まってて〜。ここが食堂で〜。ここに食料が保管されていて〜。あっそれと237号室にはなにもないから開けないでね〜…。」
おおっ、説明されたすべての箇所でイベントが発生しちょる。なんて丁寧な設計の映画なんだ…😅
プロット的にはホテルに取り憑いた悪霊が惨事を引き起こすホーンテッド・ハウスものなのだが、映画の作りはどう考えても閉鎖された空間と創作の苦しみにより狂気に陥った男の暴走を描いたサイコ・ホラーもの。
さらに子供ホラー、スーパーナチュラル、輪廻転生、悪魔憑き、スプラッターなど、種々のホラー要素を詰め込めるだけ詰め込んだ、ホラー映画欲張りセットのような作品である。
もう少し要素を絞った方が纏まりの良い作品になったのだろうが、このカオスさこそが本作の魅了なのかもしれない。
色々な要素のある映画だが、個人的に気になったのは舞台となるこのホテルが「インディアンの墓の上に建てられている」という点。
先住民の亡骸の上に成り立っているとは、このホテルは全くもってアメリカ合衆国そのものではないか。
そう思って観てみると、白人男性かつマチズモ的な思想を持つジャックの獲物は黒人に女性、そして子供(ニューエイジ)である。命を狙われるのがこの三者であることは偶然ではあるまい。
本作が制作された70〜80年代初頭のアメリカといえば、強烈なスタグフレーションと高い失業率に苦しんでいた正に冬の時代。
教師をクビになり、ホテルの管理人として糊口を凌ぐジャックがひたすらタイプするのは「All work and no play makes Jack a dull boy」という言葉。これは不況にあえぐアメリカ人を端的に表したもののようにも思える。
黒人や女性、ニューエイジなどの他者を排除する、マッチョイズムに支配された白人男性。しかしそんな彼らも不況という極寒の吹雪の中、出口の無い迷路に迷い込みやがては凍死してしまう。
そんな救いのない社会になったのは、そもそもアメリカという国が原住民を殺戮し迫害した上で成立したという建国の歴史があるからではないか。血塗られたアメリカの歴史はその根源に原因があり、それが現代においても我々を苦しめている。
そんな社会的メッセージもこの作品には込められているのではないでしょうか。
不安を煽る映像や劇伴音楽、強烈なキャラクターなど、ホラー映画のお手本のような作品であり、映画史にその名を刻むマスターピースとして扱われるのも納得な一作。
あまりにもパロディのネタになってしまったため、正直今観るとギャグっぽく見えてしまうところも多いのだが、そういうのも込みで楽しく鑑賞することが出来ました。
後に『バットマン』で宿敵・ジョーカーを演じることになるジャック・ニコルソン。確かにこの映画のジャックはほぼジョーカー。そりゃジョーカー役にキャスティングされる訳だ。
過剰すぎるジャック・ニコルソンの狂演には恐怖&爆笑間違いなし!ジョーカーの誕生譚として鑑賞するのも一興かも知れません😂♪
> 説明されたすべての場所でイベントが
そうだったんですね。知らなかった。怖くてそれどころじゃなかったのかな。
> ジョーカーの誕生譚として
うわ、それも面白い観方ですね。
> 原作を一読してみたいな
俺も、です。まだやってないけど。
「シャイニング」続編であり、「シャイニング」をスタートにして、比較的原作に近い方向へ戻したので忠実、原作者キングさんも大好き、と言われている「ドクター・スリープ」を観ると、たしかに「シャイニング」は大きく違ってそうだな、ということはうっすらわかるのですが…