「因果応報・六道輪廻」シャイニング pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
因果応報・六道輪廻
理知的なサスペンスと、精神の根源を逆撫でするような恐怖バランスが実に上手い。恐怖映画の、一つのお手本のような作品。
キューブリックの鬼才が遺憾なく発揮された本作。とにかく「こだわり」が映画以上に恐ろしい。
本作を観た事がない人でも、ジャック・ニコルソンの「例の圧巻の表情」が「シャイニングという映画だ」という事は知っている。
「地獄の」「ギネス級の」と形容されるテイク数。僅か2秒足らずのこのシーンは190回以上リテイクを重ね、壊された扉は60枚を超える。
映画史に残るワンシーンの誕生だ。
しかし地獄のリテイクはこれだけじゃない。
家族3人で廊下を歩くだけのシーン87回、
ハロランがキッチンを横切るだけ136回、
ハロランが雪上車から降りるだけ50回、
ハロランがシャイニングを説明148回、
ハロランが斧で惨殺される心身共にハードなシーン40回。
ハロラン役のクローザーズは69歳。
う〜む、老人虐待w
(監督。なんかハロランに遺恨あります?w)
ウェンディ役シェリーに対しても心労で髪が抜けるほどイジメ抜く。
あの迫真の恐怖表情は、ジャックにではなくキューブリック監督に向けられた演技抜きのショットでは?(苦笑)
徹底した無機質なシンメトリーに、双子が加わると怖い、怖いw
いわゆる不気味の谷みたいな効果が発生するのかなぁ?
英国王立大学の数学研究チームが「恐怖映画」の「恐怖度」に関与する要素を下記の項目に設定し、公式化した。
「緊張感を高める音楽 」「未知要素」「登場人物が追われるシーン 」「罠の予感 」「衝撃度」「現実味 」「虚構性」「主人公の孤独さ」「暗闇」「映像の雰囲気 」「登場人物数 」「血や内臓 」「ステレオタイプ度 」
その結果、最も恐怖を感じる映画が「シャイニング」だそうだ。
(幾度も観た作品だが、シアターでの鑑賞は今回が初めてだ。怖いよ!(笑))
キューブリック監督は、アートセンスのみでこのバランスを編み出したわけだ。
個人的に常々「数学と美術は非常に高い相関関係がある」と考えているが、本作もまた、それを証明する一つだろう。
ただ、これを実現する為のテイク数は「キューブリック監督は演技指導が出来ない」事の表れでもあると思う。チャップリン映画に登場する幼い子役達が皆、見事な演技をするのは何故か?それはチャップリン自身が「演じてみせている」からだ。子役達はその模倣をすれば良かった。
キューブリックにタメを張れる才能の名優ジャック・ニコルソンはともかく、他の出演者の皆さんは本当にお疲れ様というしかない。
まぁ、キューブリックは「自分の中に湧き上がる画を撮る為に凄まじい枚数を切るタイプの写真家」という事なのだな。写真ならばまぁ、そのスタイルはよくわかるんだけどね。
機材の素晴らしさも特筆すべきだろう。
まだ撮影したフィルムは現像しなければ確認出来なかった時代。
本作において初めて「撮影直後に見られる」「走っても手振れしない」ステディカムカメラの発明&開発が躍動感溢れる滑らかな移動撮影を実現させた。
撮影技術の転換点として大変意義深い。
ドローンなど無い中で上空からの撮影もスタッフには頭が下がる。
映像美といい、作品構成といい、これだけ素晴らしい本作なのだが、、、
私の中で引っかかるのは「原作者の意向無視の大幅改変」なのだなぁ。
原作者が納得済みならば、改変も構わないとは思うんだけどね。
とにかく
・ジャックの人物像が悪い意味で違い過ぎる。(原作は最後に命懸けで家族を守りきる)
・ウェンディの人物像が悪い意味で違い過ぎる。(原作は聡明で勇敢な女性)
・シャイニング能力設定の意味がない。
というかなり肝心な3点が極めつけに「良くない」と思うんだなぁ。
シャイニングに込められた「輪廻転生」については、キングが明言化していないのを、映像で抽象的にも具象的にも謎めかして散りばめてある点は非常に秀逸だと思うんだけど。こういう改変ならば歓迎なんだがなぁ。
非常に迷うが、原作好き、スティーブン・キング好きとして、星半分減らしたいと思う。
ホラーのレビューはサクッと短く。と思っていたがまだ書き足りないw
それだけ名作という事だろう。
(駄作なら書きたい事もない)
レビュータイトルの輪廻話、全然書けてないけど、長くなるからまぁいいや。
制作秘話で1番好きなネタは
・「こんなの簡単過ぎる」と立体迷路を軽んじていた監督自身が、迷路で迷った事
・監督のみならず、テイク中に撮影スタッフまで迷い、撮影が難航したこと。
きっと迷路が1番得意だったのは、ダニー君なんじゃないかなぁ?
恐怖映画と対象的な微笑ましい逸話だと思う。
(あ!だから映画のジャックはあんな最期なのか?監督の経験から「これ、迷って死ぬぞ?みたいな?w)
市民球場時代は、阪神の応援をしてると、火の付いたタバコや、ビール缶が飛んできてましたけどねぇ。巨人と中日よりは嫌われ度はマシかと思いますw
阪神ファンとしても、長嶋さんのあのスピーチは記憶に残り続けてます!
> 英国王立大学の数学研究チームが「恐怖映画」の「恐怖度」に関与する要素を下記の項目に設定し、公式化した。(中略)もっとも恐怖を感じる映画が「シャイニング」だそうだ。
へえええ。そんなことが。教えてくれてありがとうございます!!
シャイニング能力についての解説ありがとうございました❗️
おかげさまで謎が解けました‼️
テレビ放送の録画では全然怖くなかったのですが、映画館では違うかも…。
悲鳴あげないよう気をつけます。
ハロラン役の人は、極寒の中、長時間に及ぶ撮影で体調不良になり、入院したとか。
キューブリックったら、サドですね。
今晩は
レビュー、拝読しました。
そんなにテイクを重ねていたのですか。拘るなあ・・。
他のレビュアーの方からも教えて頂いたのですが、今作、今映画館で上映しているのですね・・。
私のレビューは、学生時代の初見が衝撃的で、久しぶり見た際に書いた本来ネタバレ表示すべき変化球レビューです。
皆、今日明日と映画館に行ってバンバン映画観ているんだろうなあ・・。
私は明日も仕事です・・。(涙)