劇場公開日 2004年11月20日

「老巨匠がくりひろげた妄想と格闘」ハウルの動く城 lotis1040さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0老巨匠がくりひろげた妄想と格闘

2013年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

楽しい

あるひとは、これをソフィーばあちゃんの夢なのだと表現した。
またある人は、ハウルという魔法使いが本当は年寄りなのだというふうに表現した。
おそらくどちらも正解なのだろう。
60を超えた宮崎駿がこの作品とどういう風に向き合ったのか。
自分がちゃんちゃんこを着る年齢にいたるとは誰だって思わない。
けれどもそれが実際に目の前に起こると本当に恐ろしいことなのだ。
これは宮崎駿の覚悟の映画でもある。
老人になってゆく自分を叱咤するための作品という意味だ。
誰だっていつまでも若いと思っていたい。
しかし、年だけはとってゆく。肉体の限界も近づいてくる。

おそらくハウルもソフィーも宮崎駿自身だ。
どうにもならない宮崎駿が作り出した自分自身と自分がこうありたいと思っていた幻想がここにはある。

そしてこうありたいと願った自分が本当に戻りたい場所は、あのハイジに出てきたアルムの山だった。
それは自分たちが青春をかけて作ったあのハイジという作品そのものだったろう。
なんだかそんなことを考えていたらとても悲しくなってきた。
この作品はとても楽しい。
それは実はとても悲しいことに裏打ちされた作品だったのではないだろうか。

lotis1040