「自分の心を取り戻して」ハウルの動く城 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の心を取り戻して
「お姉ちゃん本当に帽子屋になりたいの?一生あの店にいるつもり?」
妹のこの問いに対するソフィーの答えに彼女のこれまでの生き方が凝縮されています。「私は長女だから。お父さんが大事にしてた店だから。」
自分の気持ちはそっちのけで、置かれた状況や空気を読んで行動する子。自分のやりたい事よりも、周りから期待されている事を優先する子。幼い頃からそうやって自分の気持ちに蓋をしていくうちに自分の本当の心を無くしてしまったソフィー。彼女は荒地の魔女に会うよりも前に自分で自分に呪いをかけていました。
街でハウルに助けられた時も、その見た目の美しさと好青年ぶりにときめきを覚えますが、自分の気持ちに気付けません。
荒地の魔女に老婆の姿にされてしまったソフィー。最初驚きはしたものの、悲観的になる事はなく、老婆ならではの知恵と逞しさを見せてくれます。老婆として周囲の世話を焼くうちにソフィー自身の心の壁も薄れていきます。そして、ハウルへの愛の大きさが彼女が自身の心を取り戻す原動力となっています。
「私、あなたの助けになりたいの!」「ハウル大好き!」
自分の気持ちに気付けただけではなく、それを言葉にして相手に伝える事のできる喜び。ソフィーは大きく成長できました。
ハウルの存在によりソフィーは自分の心を取り戻しました。そしてハウルはソフィーによって自分の心(心臓)を取り戻しました。ソフィーとハウル。お互いがなくてはならない存在であり、成長し合える仲。素敵な関係です。
前半のソフィーのように、「これでいいんだ」と自分を無理やり納得させ、自身に呪いをかけて生きてきている人って沢山いると思いますし、私もその一人です。世の中上手く渡っていく為にはそうやって自分を曲げる柔軟性も必要ですが、それをやり過ぎるといつか自分の心を無くしてしまいそうです。自分に言い訳ばかり言って現状を無理に飲み込んでいては、自分で自分の可能性を狭めてしまいます。
自分の心に耳を傾け、勇気を持って一歩踏み出せば希望に満ちた新しい世界が開ける。ソフィーはそんな事に気付かせてくれました。