「色ボケ爺の暴走とも言うべき無茶苦茶な映画。ストーリーテラーとしての役割を放棄することで、辿り着ける境地があることを教えてくれる奇跡の一作。」ハウルの動く城 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
色ボケ爺の暴走とも言うべき無茶苦茶な映画。ストーリーテラーとしての役割を放棄することで、辿り着ける境地があることを教えてくれる奇跡の一作。
魔女の呪いにより老婆へと変身してしまった少女ソフィーと、荒野を歩く城に住む魔法使いハウルとの恋模様を描くファンタジー・ラヴストーリー。
監督/脚本は『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』のアニメ界のレジェンド、宮崎駿。
魔法使いハウルの声を演じたのはドラマ『HERO』や『プライド』の、元SMAPの木村拓哉。
ハウルの弟子である少年、マルクルの声を演じたのは『千と千尋の神隠し』にも出演していた神木隆之介。
隣国の王子の声を演じたのは『千と千尋の神隠し』『猫の恩返し』に続き3度目のジブリアニメの出演となる、TEAM NACSのメンバーである大泉洋。
第31回 ロサンゼルス映画批評家協会賞において、作曲賞を受賞!
元々は『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』を監督したことにより業界内では一目置かれる存在となっていた新進気鋭の演出家、細田守を監督に据えて制作されていた作品。
ジブリの採用試験を受けた経験もあり、また宮崎駿と同じく東映動画に在籍していたことも監督抜擢の要因となったのだろう。
注目の新人演出家ではあったがまだまだキャリアの浅い細田守にとって、宮崎駿の下で映画を作るのは相当な難事だったらしく、その制作は難航を極める。
結局、プロデューサー鈴木敏夫の判断により細田守は監督を降ろされ、企画立案者である宮崎駿が監督に就任することとなった。
この時の経験が『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』という映画に表れているらしいが、この映画の内容から察するに細田守の精神的なダメージは相当なものだったんだろうなぁ。凄く暗いアニメなので、まだ鑑賞していない方は是非。驚きますよ😵
『ハウル』公開から2年後、細田守は『時をかける少女』によってその地位を絶対のものにするのだから、人生はわからない。
挫折せずにトライし続けることが大事なのだということを学ばせてくれるエピソードですねぇ。
『ハウル』の印象的なセリフ「未来で待ってて!」と、『時かけ』の名言「未来で待ってる。」が非常に似ているのは偶然ではないんです。
ダラダラと無駄話をしてしまった😅本題に戻ります。
『千と千尋の神隠し』から、明らかに宮崎駿はストーリーテリングへの興味を失っている。
『千と千尋の神隠し』では、それでもまだ物語を語ろうという意思を感じたが、本作ではもうそんなことどうでも良い!という開き直りを感じる。
はっきり言ってもうこの映画、無茶苦茶💦
ハウルがいったい何と闘っているのかもようわからんし、カルシファーとの契約についてもようわからんし、クライマックスの展開もようわからん!
物語の目的がさっぱりわからんし、どこを目指しているのかもわからん。もうわからんことばっかり!
これは宮崎駿が「今回は本格的なラヴストーリーで行く!」というテーマを掲げておきながら、「ラヴストーリーってどうやって作るんだっけ?」と鈴木敏夫に相談したというエピソードから察するに、本人でもよく分からないままに作っていたんじゃないかな。
また、「オタキング」こと岡田斗司夫さんが本作のわかりづらさについて「ほとんどソフィーの主観で物語を描いているから」と解説していたが、これは正に言い得て妙!
ハウルの視点から物語を描いたり、回想シーンを入れたりすればもっとお話しがわかりやすくなったはずだが、あえてそうしていないのは、やはりこれが「本格的なラヴストーリー」を目指して作られたものだからだろう。
世界観の説明を極限まで省き、「キミとボク」にのみ着目するというセカイ系的な構造こそラヴストーリーであるというのが宮崎駿流の見解なんだろう。
無茶苦茶な映画なことは間違いない。じゃあ本作がダメな映画なのかと言うと、決してそんなことはない!むしろ、かなり好き!
久しぶりに鑑賞したが、子供の頃に観た時よりも一層面白く感じました😍
老人まみれのラヴストーリーという、監督の心境が反映されまくった歪な物語は、意味よりもパッションが重視された迫力のある映画となっており、その勢いには心が揺り動かされる。
画面越しにも情熱が伝わってくるような熱さがあり、何故か終始涙目で鑑賞していた🥲
冒頭のハウルとソフィーが出逢うシーン、ハウルの「やぁ、探したよ。」というセリフは、その意味が分かると爆発的なエネルギーを持つ素晴らしい伏線となっており、こういうワザをサラッとやってしまうあたり、本当にこの爺さんは天才だなぁ、と思わざるを得ない。
クライマックスの持つエモーションも素晴らしい!
「心って重いの。」というセリフが好きすぎてヤバい。
カブが人間に戻るところとか、もうめちゃくちゃなんだけど、だがそれがいいっ!
天才の開き直りほど心地良いものはないです😌
色々言われるキムタクの声優起用、自分は決して嫌いではない。
ただ、倍賞美津子さんは、うーん…😥
おばあちゃんソフィーは120点なんだけど、流石に18歳の少女役はキツい💦
「18歳から老婆まで同じ役者にやって欲しいー!」というのが宮崎駿の要求であり、それをクリアしたのが倍賞美津子だったらしいが、やっぱりキビしいっす…。
声のせいでソフィーの魅力が〜😣
海外版では、どの言語でもソフィーの声は老人と少女でそれぞれ別の人が担当しているらしいが、絶対にそれが正解だと思う。
これ以上型を崩すと、バランスが崩壊してしまうというギリギリのラインを保っている奇跡のような作品。
人によっては、これはもうバランス崩壊してる!と思うかも知れないが、自分としては結構好きな作品。
色ボケもここまで極めると立派っ!👏