「優れた特異な構成原作、優れた改編脚本」半落ち KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
優れた特異な構成原作、優れた改編脚本
過去のTV録画分の再観賞に続いて、
原作も再読した。
そして、横山秀夫がこの作品で直木賞受賞を
逃した経緯についても知った。
その是非について論ずる能力は無いが、
「半落ち」は優れた特異な構成が生きた、
直木賞受賞に充分値する素晴らしい作品
だと私は思っている。
(尚、この期の直木賞受賞作品は選定無し)
さて、映画の方だが、
原作の最後の章で真相が明かされる
劇的性は無いものの、
原作主旨を損なうこと無しに、
登場人物とエピソードの追加と削除、
また多くの大胆な改編を行い、
2時間強に収めた優れた脚本だったと思う。
原作は皆さん御存知の通り、
各章を全て別の語り手による視点で
時系列的に事件を追う構成になっている。
ひとつの事柄を別の視点で繰り返す
『ラショーモン・アプローチ』の「羅生門」
のような映画はいくつかあるが、
この作品のような、
何人かの視点で時間を繋いでいくケースは
映画表現としては難しいだろう。
そんな制約の中で、梶と志木を中心に据えて
梶の内面に迫った脚本は良かったと思う。
ただ、ラストシーンは、時間的制限からか、
少し集約過ぎてしまったようには感じた。
因みに、私の横山秀夫ベストは、
「クライマーズ・ハイ」です。
この作品は「半落ち」の翌年に出版
されましたが、
「半落ち」を巡る選考の経緯からの
横山氏の直木賞決別宣言が無ければ、
私は間違いなく、「クライマーズ・ハイ」が
直木賞をリベンジ受賞したものと想像
しています。
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