旋風の中に馬を進めろのレビュー・感想・評価
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旋風の中に馬を進めろ
同時期にほぼ同じスタッフと似たキャストで製作されたウエスタン映画史上もっとも不可思議で且つ難解な同じくモンテ・ヘルマン監督による異色の西部劇「銃撃 The Shooting」に比較すると、一見こちらはかなり分かり易い単純明快なストーリーを持った西部劇に見える。
余りに唐突に劇中に放り込まれ、登場人物が何者なのか?どう言ったシチュエーションなのかも示されぬまま、訳も分からぬまま異様に緊張感の張り詰めた場面に遭遇させられた上、難解さの極みとも言えるほとんど観客を突き放したような意味不明なラストを迎える前者とも異なっている。
この映画では3人のカウボーイが西部を移動中にたまたま通り掛かった谷底で、とある一軒屋に辿り着き、旅の一夜の世話になる所から映画は始まる。実はその一軒家はお尋ね者集団の隠れ家であり、主役であるカウボーイ達もただならぬ雰囲気からそのことを察知してはいたものの、翌朝早くその場を去ることもあり、触らぬ神に祟りなしの心境で干渉しないで一夜を過ごしていた。
だが悲劇はその翌朝、彼等がそのキャンプ地を去る寸前に起きたのだった。約10人からなる自警団がこの隠れ家を包囲しており、唐突に銃撃戦が始まったのだ。
不幸にも何の罪もない彼等3人のカウボーイ達もこの事件に巻き込まれてしまい、自警団から悪人一味に間違えられることになってしまう。
そしてここから命懸けの必死の逃亡劇が始まる。悪人一味とは何の関係もなく、たまたま通り掛かっただけであることを説明する余地もないまま、イキナリ3人の内の一人が自警団により射殺されてしまう。残りの2人(キャメロン・ミッチェルと若き日のジャック・ニコルソン)は、馬にまたがり何とか銃弾の嵐を掻い潜って谷を過ぎるが、やがて馬を捨て目の前に立ちはだかる断崖絶壁をひたすら登るしか生き延びる道が無くなってしまう。
真のお尋ね者グループは全員、撃ち殺されるか焼き殺され、捕まった者も結局吊し首にされてしまう。
唐突に悪夢としか言いようのない世界に投げ込まれた上、無実の罪を背負わされてしまった2人のカウボーイは、あたかもヒッチコック映画の主人公たちの如く、ひたすら逃げるしかない。映画の大半のシーンがアンソニー・マン的な3次元的な地理的状況の中で展開していく。
何よりも一番恐ろしいのは、この全く善良なカウボーイたちが命掛けで逃げていく中で否応なしに取らざるを得ない行動が、表面的には悪人一味の取る行動に似通って来てしまい、外見的には紙一重のように見えてしまうことである。
この悪夢から逃げ生き延びる為には、食べねばならず、馬が無ければ決して逃げ延びることなど出来ないからである。そしてそこから更なる悲劇が生まれていくこととなる。
しかし彼等は何故逃げなければならないのか?
やがて壮絶な死を遂げることになるベテランカウボーイ(ミッチェル)に別れを告げ, 最後の一人(ニコルソン)は、吹き荒ぶ旋風の中に馬を進めていく。
TV用西部劇かと思う程の低予算とチープなタイトル字幕。西部劇の黄金時代は完全に幕を降ろし、時代は既にマカロニウエスタンが一時代を築き始めたちょうどその頃に本国アメリカで製作されたウエスタン。明らかにアメリカン・ニューシネマを意識させる作品でありながら、何故か映画作り自体は非常にシンプルで、且つ1950年代の正統派ウエスタンのスタイルを踏襲していることもまた事実である。
極めて異色な世界でありながら、何故か取りつかれたように、後々まで引きずってしまうような映画である。
尚、今回観たDVDには、両作品共に監督モンテ・ヘルマンとヒロイン役であるミリー・パーキンスによる副音声が収録されており、作品の難解さ、異様さとは異なる楽しい貴重な回顧録を堪能することが出来る。
"Waco"
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