「ハチクロ」ハチミツとクローバー kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ハチクロ
『頭文字D』の主役の車はハチロクだが、この映画の略はハチクロ。『NANA』のハチは宮崎あおいだが、この映画のはぐみは蒼井優だ。と、ろくでもない文ではじめてすみません。
この作品のタイトルは原作者の羽海野チカがスピッツのアルバム「ハチミツ」とスガシカオのアルバム「clover」を聴いていたことによって決定したらしいけど、この映画のテーマソングにもなっているスピッツの「魔法のコトバ」が情感たっぷりに歌われて、思わず青春君したくなってきました。スピッツが主題歌を歌うといったら、どうしてもTV『白線流し』を思い出してしまいますが、このハチクロも同じく若者5人が中心人物でした。映画の中で、「長野県民の4割は海を見たことがない」という台詞が妙に印象に残ってしまうのですが、『白線流し』も海のない長野県が舞台。そして原作者の名前といい、舞台となる大学が浜美大といったことからも、クローバーよりも海がテーマだったに違いありません(違います)。
やっぱり青春モノは男3女2がピタリときますが、最近はTVドラマにしろ映画にしろドロドロな関係になってしまうパターンが多いのに、この映画は純情すぎるほどの登場人物ばかりで、片思いばかり。「まるで中学生」という言葉にも表されているように珍しいくらいの純情路線なのです。そこがかえって新鮮に映り、日頃から鬱積した肉欲的雑念を洗い流してくれるほど。映画鑑賞後には海へ行って「好きだー!」と叫びたくなること間違いなしです。
美大というトコロは入ったこともないので、どれだけ精神的自由が約束されているのかわかりませんが、これほど自分を表現できる教育機関はないでしょう。在籍中のまま個展を開き、作品を発表できるなんてうらやましい限りです。『純情きらり』の時代だったら、特高警察に全部没収されるところですよ。しかも森田が最後にとった行動は、現代の金銭至上主義に対抗してるかのようで、むしろ清々しい思いにさせてくれました。
蒼井優ならこの台詞の少ない役柄は難なくこなすだろうと安心して観ていられたし、関めぐみの演技もちょっとキュンっとなってしまうほど良かった。青春しすぎてバカっぽく見えるのに慶応出身の櫻井くん。彼はかねてより憧れの修復師に出会うけど、飲酒運転だけはしないように心がけてもらいたいものだ。万が一捕まったら、「美大生って面白・・・」などと言われますよ!