「義を見てせざるは勇無きなり…但し、言うは易く行うは難し。」七人の侍 デブータさんの映画レビュー(感想・評価)
義を見てせざるは勇無きなり…但し、言うは易く行うは難し。
日本映画の金字塔が一つ。確実に。
噺のプロットは王道中の王道……ん?てか、今作が王道元?😁
強者による多勢に無勢で困窮している弱者の為に、少数精鋭が助太刀する…
多額の報酬や褒賞なんてもモノは全く無い、立身出世にも全く関係無い。
それでも…助ける心粋。
滾るよね、燃えるよね、奮えるよね。
そして、憐れな筈の百姓も…ただ哀れな存在じゃない。
弱者面していても、その言動には一癖も二癖もある。
近くで戦が起きれば、機を見計らって落ち武者狩りをして装備品を掠め盗るし、米を出せ!麦を出せ!と云われても平気の平左で、嘘を付いて「ない!」と云い…その実、床下や納屋の土の下や時には墓の下にまで穀物やら酒やら何でも備蓄する強かさや狡賢さを持っている…
途中…侍達と百姓達の間に、そういった蟠りが出来た時、
二つの相容れない水と油な両者を取り持ち、マヨネーズに於ける酢みたいな貴重な存在となったのが、
野犬の様に荒々しく侍の作法も常識もそっちのけだった菊千代と云う異端。
彼は云う…
「お前ら!百姓を何だと思ってんだ!仏様とでも思ったか?奴らほど悪ズレした生き物はいないんだ!平気でウソはつくし、落ち武者狩りもするし、米や麦や小豆、酒だって…探せばどっかから必ず出てくる!何でも隠すし、卑怯で、卑屈で、見てるコッチが泣けてくらぁ…でもな!連中をそんなケモノにしたのは、何処のどいつだと思う!お前ら侍だよ!…戦の度に田畑は潰す!米でも何でも奪ってく!村の女には手を出す!歯向かえば殺してくる…じゃぁ、百姓は一体どうしたらいいってぇんだ!」と。
菊千代の魂の叫びにも似た涙混じりの独白に、他の侍達は、何かしら心当たりが有る風に神妙な面持ちになる…
日本人の弱さと強さ、邪なトコと清いトコと、何だかんだ総てが詰まっている様に思う。
侍をスカウトに来た4人の百姓達を、最初は鼻で嗤ってバカにしていた荒くれの人足三人衆も、嫌味を垂れながらも、彼らの苦心を理解しながら助太刀に二の足を踏む勘兵衛らに…
「おい!この白飯を見ろよ!あんたら侍に白飯食わせる為に、コイツらは何を喰ってると思う?ヒエだけなんだぜ?…コイツらだってコレで精一杯なんだ!」
…と、助け舟を出す。
こういうところが観る者の胸を熱くする。
時として、大を助ける為に小を切り捨てる苦渋の決断を迫られる事が有るかもしれない…その時、無関係な連中は、涙を飲んで我慢した人々を、利他的な所作を美徳として美談として賞賛するかもしれない…
そんな胸糞悪い美辞麗句よりも、
利己的な言動はいつか己をも滅ぼすから…と、血反吐を吐く思いで、歯軋りしながら、自らを納得させた自分自身を誇りに思うしか無い。
それでも、その悔しさや苦悩を、ちゃんと見ている人は見ているし、分かち合おうと理解を示してくれる人もきっといる。
そういった何とも言えない人生の機微が、今作には沢山詰まっている。
今、この令和に、今作をリメイクしたら、どんな陳腐な駄作が生まれてしまうことやら。
だいたい…今じゃ、肉厚ちゅうか、、濃いぃぃぃ感じのアブラっぽい?ギラついた役者さんってめっきひ減っちゃったもんね。
中年以降の俳優さんも…皆んなイケメン、イケオジだし。
かといって、Vシネで893役ばっかやってる強面や悪人面な役者さんは野武士役に取っておきたいし、、
勘兵衛はどうせ役所さんで、五郎兵衛は堤さん、平八はムロさん、久蔵は佐藤健さん、七郎次が鈴木亮平さん、勝四郎は…童顔の若手イケメン俳優?
で、菊千代だよ、菊千代…当時の三船さんは、あの風貌で33歳か34歳…
いる?今のアラサー俳優で、菊千代役に耐えうる人…
まぁ、やっぱ無理だわな。
え?山崎賢人?…駄目だよ、ダメ!ダメ!…利吉でしょ、ピッタリなの。
じゃぁ、、山田孝之さん?……ん〜、ん~~、なんだかなぁ、
つか、皆んな全体的にキレイ過ぎるし、痩せ過ぎなんだよなぁ、スタイル良過ぎでさ。
結果、リメイク意味あんの?ってね。
漫画やアニメの実写化断固反対!ってのはあるけど、
実写のリメイク向いてないって、やっぱもう至高の完成形なんだよなぁ、原典が。
土に触れる事が無い人には、ニュアンスが分からないと思いますね。
法隆寺のレプリカに意味があるのか、原典を大切に保存して多くの人に観てもらう事しか無いと思います。

