劇場公開日 1954年4月26日

「2種類ある「七人の侍」を両方とも観てるが......」七人の侍 アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.02種類ある「七人の侍」を両方とも観てるが......

2020年2月16日
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‘70年以降に、「荒野の七人」のリバイバル上映人気の頃に名画座で観ることが出来たのは、160分の海外版「凱旋公開」バージョンのみ。

当時のクロサワは、「荒野の用心棒」事件から始まった東宝との確執と、「トラ・トラ・トラ」降板事件でキチ◯イ扱いされて殆ど業界追放状態に近く映画も撮れない状況となっていた事から(三船乱入仲違い事件と自殺未遂事件もあり)この映画のオリジナル版の事なんて、最早どうでも良くなっていた東宝には既に全長版など「現存しておらず」、鑑賞不能作品になっていた。

その頃はほぼ、クロサワは忘れられた過去の人状態だったから、世間も誰も何とも思ってなかった。

その後、’70年代も後半になり、例のコッポラ、ルーカスやスピルバーグなどのUCLA組が、「クロサワ、我が師よ。」と持ち上げた事から状況は一変。
しかし、金になるからとクロサワ・フェスティバルみたいに作品の連続上映組んでも、この作品だけできない。

それでそれから慌てて日本中探し回って断片でもなんでもかき集めて来てなんとか「復元バージョン」作ったのが、現在公開してる素材なので、これで本当に元どおりになってるのかは、わかりません。
という訳で、実は「名作としてずっと大事に保存され続けてきた作品」などというには程遠い扱いを受けた作品だったのだ。

元の版がぞんざいな扱いを受けたのは、海外の映画祭で受賞したのは「海外版」だったから、と言う事も関係してるかもしれない。
時間的にも適度な長さで、途中休憩もなく、上映する側にはムシロ都合が良かったとも考えられるし。

内容的には、「ニューシネマパラダイス」の両バージョンとの関係に似ていて単なる短縮版ではなく、菊千代が中心のような印象の新編集が施されていたようだが、その後「復元版」が作られてそれを観るまでに10年以上経過してしまっていたため、ハッキリとは比較できないが、当時の印象は、先に『荒野の七人』を観ての興味から鑑賞したものの、「白黒映画だったのに、そんな事を感じさせなく、すごく面白かった」と強く感じた事。

今回、「復元版」を更に4K修復したもので、前回から30年ぶり位に劇場で観た。
名作の輝きは、やはり劇場で観てこそだと改めて感じるとともに、スマートに編集されていたように思われる十代の頃に観た海外版のことを懐かしく思う。
(残念ながら立場逆転になってしまい、現在は「海外版」の方が封印状態に近い扱いとなり鑑賞不能らしい.....)

ポスターのビジュアルも、現在の物は「復元版」公開時のもので、「海外版凱旋公開」時のものがベースになっている感じ。
オリジナルのものはもっと明るい感じで、菊千代が中央で刀を振りかざして立っているもので、志村喬以外の他の顔ぶれは扱いも小さく、むしろ志乃役の津島恵子の顔が大きく写っていて、この順番にこの三者が主役扱いだったということが分かる。

また『侍のテーマ』の歌付きバージョンも好きです。
何度聴いても泣ける歌詞で、生涯ベストの一つの大好きな曲です。

アンディ・ロビンソン