「あの頃、ルコントを追いかけた」仕立て屋の恋 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃、ルコントを追いかけた
かれこれ四半世紀近い昔、学生時代にVHSをレンタルして以来の鑑賞。
思えば、映画というものにはまるきっかけになったのは、パトリス・ルコントのこの時代の作品群であった。この頃のルコントの映画が、スピルバーグやルーカスの映画にはないものを教えてくれた。最近は観る機会もめっきりと減ったが、このサイトの「よく観る監督」でもいまだに上位にランクされている。
ドニ・ルノワールによるカメラの動きが淫靡である。サンドリーヌ・ボネールはそれほどの美人ではないのだけれど、とてもエロティックに映し出されている。
そして、主人公のイール氏ことミシェル・ブランが、引きこもりの中年男であるだけなく、非常にエロい。特に、ボネールに覗き見を知られてしまってからの、開き直ったかのようなエロ全開には脱帽である。性愛の対象にここまで率直に自分の欲望をさらけ出せる彼が羨ましい。
しかし、そこはフランス映画。甘い香りに包まれたショコラは、実は苦かったりするものだ。イール氏にとって、このチョコはほろ苦いどころか、極めて強い苦みを湛えいた。
この頃のミシェル・ブランは俳優として乗りに乗っていたと言ってよい。ルコント作品の常連であるばかりでなく、「他人のそら似」を自ら監督したり、「可愛いだけじゃダメかしら」でイザベル・アジャーニとも共演している。
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