「見る価値のある映画だと思う。」グッドナイト&グッドラック 岡崎仁さんの映画レビュー(感想・評価)
見る価値のある映画だと思う。
「赤狩り」が吹き荒れる1950年代のアメリカで、「マッカーシズム」に公然と立ち向かったCBSのキャスターとスタッフたちの姿を描く。
赤狩りは、米国ではとても知られた話だし、本作では前提となる説明などが無い。私たち日本人が鑑賞する場合は、一定程度の予習というか、時代背景や知識を知っておいた上で見たほうがいい。
全編モノクロで、劇中を通じて流れるジャズが、時代の雰囲気を醸し出し、題材の割には重くなり過ぎず、映画の流れを音楽に乗せている。
キャスト陣はみな好演。素晴らしいアンサンブルキャストだ。個人的には、『アンタッチャブル』から注目していたパトリシア・クラークソンが、ロバート・ダウニー・Jr演じるスタッフの妻役で出てきたのが嬉しかった。
マッカーシーだけは、実際のアーカイブに基づく、本人の映像を使っている。
人権侵害や権力乱用が、本作の大きなテーマだ。それと同時に、テレビが、多くのひとが知るべき真実を、国民に伝えていないのでは無いかという危惧を、本作から強く感じた次第だ。
本作は、強烈で力強い怒りを秘めつつ、静かな中で観客に考えさせてくれるドラマに仕上がっている。テレビと社会の在り方を考える上で、見る価値のある映画だと思う。
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