五条霊戦記 GOJOE : 映画評論・批評
2000年10月1日更新
2000年10月7日より日劇東宝ほか全国東宝系にてにてロードショー
SFXアクションで魅せる石井流“男の美学”
殺人鬼と化した義経と修験者・弁慶との対決を「マトリックス」ばりのサイバーアクション(最近はこの手の決まり文句だらけですが)で描いた、と評判の「五条霊戦記」は、期待に違わぬ傑作です。オカルティズム(精神)とアクション(身体)の運動が、めくるめく高速で展開するフィルムは、ようやく撮りたいものを撮りたいように撮った石井聰互の会心作でしょう。監督だけではありません。色白の面立ちの浅野君が凄みを帯びた美少年・義経ならば、弁慶を演じる隆大介は、逞しい体躯とイキっぱなしの形相で、さすが「無名塾」の面目躍如。無宿人の永瀬正敏、阿闍梨の勅使川原三郎など、他のキャラもまた、役者自身のナルシズムと妙に一致して、独特のオーラを放ちます。そしてクライマックスは日本映画史に残る殺陣の名場面ではないでしょうか。義経の刃が弁慶の身体を貫き、そこに目も眩む稲妻が炸裂し、橋が燃え上がるさまは、クローデル風に言えば、天と地の壮大なるまぐわい、男と男の濃厚なセックスシーンなのです。しかしそれを大島渚のように美学的ではなく、圧倒的なアクションとして畳みかけ、そこに突如、エクスタシーに満ちたアナーキーな空間を切り開いたところが、石井流の男の美学なのです。
(日下部行洋)