ガールファイト : 映画評論・批評
2001年5月1日更新
2001年5月12日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹系にてロードショー
インディペンデント出身の女性監督、鮮烈デビュー
フラメンコのサウンドをバックに、ヒロインがもの凄い形相でこちらを睨みつけるオープニングには、意表を突かれた。
監督のクサマは様々なインタビューで、この映画が作家としての彼女の本質よりもいくぶん商業的な作品になっていると語っている。厳しい状況にあるインディーズ映画界で、監督として活動しつづけていくためには、デビューするだけでもいろいろな苦労があるのだ。
そういう意味でこの映画には、商業性と彼女の意地がぶつかり合っているところがある。ヒロインの闘争心が剥き出しになったオープニングもそのひとつだ。ヒロインが恋するボクサーの若者に、“ロッキー”の恋人であるエイドリアンと同じ名前を付けているのも、決して偶然ではないだろう。そんなふたりは最後に、リングの外ではなく上で、殴りあいながらお互いの気持ちを確認していくのである。
しかしもちろん、意地だけが魅力の映画ではない。ヒロインが暮らすのはブルックリンのレッド・フック住宅だが、ジェントリフィケーションから取り残されたような風景やヒスパニックのコミュニティの空気を、日常的な視点でとらえた映像には、ハリウッドにはないインディーズならではの肌触りがある。
(大場正明)