劇場公開日 2023年11月23日

「本当にもうずっと1番好きな映画」ゴーストワールド ケロケロケロッピさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本当にもうずっと1番好きな映画

2021年2月20日
iPhoneアプリから投稿

中学生のときに観て以来、ずっと1番好きな映画。何回も何回も観たけど、30歳になって10年ぶりぐらいに観直した。

初めて観たとき、きっと私もこんなふうに社会に適合できないまま大人になっていくんだろうな と感じた。
主人公と同じ高校卒業のタイミングで観たときも、私のところにもあのバスが迎えに来たらいいのに と思った。
すっかり大人になって社会人経験もそれなりに積んでから観ても、やっぱりイーニドに感情移入してしまう。

ただ、昔と違ってレベッカやジョシュなどの「普通の大人になろうとするティーン」や、父親やマキシーン、美術の先生など「モラトリアムから抜け出させてあげたい大人」の気持ちもわかるようになったけど。

イーニドは根性も目標も無く、周りの人たちの気持ちや常識的な考え方を馬鹿にして偉そうにしている生意気なティーン。でも美術の授業で先生を感心させようとしたり、嫌いな人のコネでもバイトを始めようとしてみたり、奨学金で進学しようとしたりと、実は努力している。本人なりに。
ただどうしても馴染めないし上手くいかない。自分を偽っているように感じる。大部分の人は自分の個性よりも社会通念を優先し、ナイキを履いて生きていくことができるが、どうしてもできない。馴染めない事実を受け入れて社会のすみっこで生きていくことを選んだ大人の末路ことシーモアにシンパシーを感じて心を寄せるけど、いざセックスしてみると何だかコレじゃない。こんな大人になりたいわけじゃない。そこで感じる本当の孤独。

自分を理解してくれる人なんてそうそういないんだよな本当は。元から社会に馴染める人たちもいるけど、大抵の人たちはレベッカのように最初は無理だと思いながらも自分を騙しながらなんとなく社会生活をして、いつのまにかそれが本当の自分のように感じるようになって、だんだん馴染んで生きていくものなんだよなあ。またはシーモアのように馴染めないまま社会のすみっこでキモがられながら生きていくか。どちらも受け入れずにバスに乗ったイーニドはどこへ行ったのかなあ。何回観ても未だに答えが出ない。

ケロケロケロッピ