ゴーストシップ : 映画評論・批評
2003年1月7日更新
2003年1月11日より渋谷東急ほか松竹・東急系にてロードショー
この映画の主役は“船”なのだ
開巻いきなりの大スプラッタ場面にはギョッとするが、じつは意外と正統派の海洋怪談ものである。「さまよえるオランダ人」伝説や、劇中でも言及される「マリー・セレスト号事件」の系譜に属するお話といっていいだろう。
なんといっても、タイトルロールの“船”がすばらしい。40年前に行方不明になった、スペインの豪華客船アントニア・グラーザ号――望みうる限りの贅を尽くしたというこのオーシャンライナーの威容を前にすると、紅一点のたくましいヒロインはともかく、船長役のガブリエル・バーンを筆頭に、男どもはどうにも影が薄い。この映画の主役は“船”なのである。
幽霊船を題材にした映画は、映画史を顧みても、これといった決定打がない。じつは穴場なのだ。デジタル視覚効果の恩恵で、ジェームズ・キャメロンでなくとも巨大客船を再現することが可能になった現在、勇躍これに挑み、しかも全面的にCGに頼るのではなく、10メートルを超える大型模型をわざわざ作って巧みに合成。“リアルな幽霊船”をスクリーンに出現させるのに成功している。
(添野知生)