ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン : 映画評論・批評

2006年6月20日更新

2006年6月17日よりシネマライズほかにてロードショー

シェリダン監督の物語でもある50セントの半自伝的作品

「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」は、50セントが主演する彼の半自伝的な作品であり、このカリスマ・ラッパーの存在に関心が集まるのは当然だが、それと同時に、監督のジム・シェリダンが、自分のテーマを掘り下げ、自分の物語を語る作品でもある。

この映画の人種問題を北アイルランド紛争に、黒人のギャングをIRAに置き換えると、この物語と登場人物たちの関係は、「ボクサー」のそれと見事に重なる。シェリダンは、過度に抑圧されてきたアイルランド人と黒人の間に、共通する歪んだ感情を見出す。彼らは、苛酷な現実のなかで、IRAやギャングになることを余儀なくされる。そして、その泥沼にはまり込んだ人間は、人種や階級の壁を越えて成功を手にしていく人間を妬み、憎悪し、そこから激しい対立が生まれるのだ。

さらに、主人公と父親の絆にも注目すべきものがある。シェリダンの「父の祈りを」では、主人公の心が、父親と父親的な存在の間で揺れ動いた。この映画では、父親を知らずに育った主人公の前にふたりの父親が現れるばかりではなく、彼の父親探しは、50セントの自伝という枠組みを越えて、父親殺しという神話的な物語に発展していくのだ。

(大場正明)

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