劇場公開日 2005年7月16日

皇帝ペンギン : 映画評論・批評

2005年7月12日更新

2005年7月16日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

8880時間を86分にまとめる心意気も素晴らしい

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ドキュメンタリーの成否は、被写体の魅力で、ある程度は決まるものだと思う。ペンギンは、かわいい。面白くないはずがないと思った。

タキシードを着たよちよち歩きの太っちょさんたちは、その姿を見ているだけでなごんでしまう。しかし、そのよちよち歩きの一歩一歩に、感動しないではいられなくなる。このキュートな彼らが生きるため、種の存続を守るために、このような苦行を強いられていたとは! ペンギンという動物の愛嬌たっぷりなかわいらしさと、あまりに過酷な宿命に引きつけられっぱなしである。

フランスの製作者たちは、このペンギンたちにパパ、ママ、坊やという役割を与え、ナレーションでドラマを紡ぎ出す。とはいえ「子猫物語」のような作為は、もちろんなし。マイナス40度という南極を舞台に、淡々とした語り口は彼らの生態に詩的なインパクトを与えるのみ。生命の厳しさと神秘。そして、たとえば卵を守るために押しくらまんじゅうをするオスたちのけなげさ、エサを蓄えるため旅するメスたちのたくましさ、赤ちゃんペンギン(本当にピングーの妹、ピンガにそっくりでぬいぐるみみたい!)の、微笑ましさ。8880時間という途方もない撮影を敢行しながら、86分にまとめる心意気も素晴らしいのだ。

若林ゆり

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