どつかれてアンダルシア(仮) : 映画評論・批評
2001年3月15日更新
2001年3月31日よりシネ・アミューズほかにてロードショー
スペインにも漫才コンビの愛憎劇があった!
日本独自のお笑いと思われていたどつき漫才。それがスペインにもあった、と言うのがミソのこの作品。客の前で固まった相方をドツいたことが偶然にも大受け、そこから一気ににのし上がっていく漫才コンビを描いているのだが、芸自体はただ顔を叩くだけに過ぎない。では、なぜこの作品がスペインの歴代興収トップ10に入るほど大ヒットしたのか、それはスペインという国の近代史がベースになっているのだ。30年以上も続いたフランコ政権から民主化へと緩やかに移行していく73年を映画の冒頭に据え、「ツッコミ役」を体制側、「ボケ役」を反体制側の象徴としたことで、せめぎ合う2大勢力のパワーゲームの歴史を、一組の漫才師の隆盛として表現しているのだ。とはいえ、相方への異常な嫉妬心と過激な化かし合いには、実際の芸能界の内幕を彷彿とさせ、死を懸けた彼らの最後のステージには、あまりに荒唐無稽で圧倒されるばかりだ。そして待ち受けるラスト1秒の痛烈なオチこそが、「歴史は繰り返される」ことを見事に証明しているのだ。なお、映画に多数登場する実写映像の中で驚いたのはあのユリ・ゲラー。その爽やかな胡散臭さだけは、体制とか政治といった言葉は似合わない。
(編集部)