ドミノ(2005) : 映画評論・批評
2005年10月11日更新
2005年10月22日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
光と影に彩られたドミノ・ハーヴェイの生きざまを見よ
実在した女バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)の鮮烈な生きざまを、トニー・スコット監督が、パズルのような斬新な構成と光と影が交錯する詩的な映像で映画化した快作。一応、FBIの尋問を受けるヒロイン、ドミノの回想で、裕福な家庭に生まれ育ちながら、生の実感をスリルに求めて賞金稼ぎのチームに加わった経緯が軽快に綴られる。だが、その合間にドミノがFBIに拘束された事件の断片の数々を巧みに挿入。中盤からは、その事件の発端から、ドミノたちの関知しない所で暗躍する者たちの陰謀や思惑が複雑に絡み、予測不能の悲劇へとなだれ込む様を息詰まる緊張感とともに描いていく。
賞金稼ぎという仕事が持つ危うさのすべてを集約して見せつつ、ドミノの心に秘められた思いを徐々に浮き彫りにする絶妙の仕掛けなのだ。しかも、ドミノたちを密着ルポするテレビ番組のリポーター(人気TV俳優が実名で出演)らも巻き込まれ、マスコミをも皮肉る贅沢さ。もちろん、死と隣り合わせの瞬間に魅せられたドミノを体現したキーラ・ナイトレイは、息を呑むほどクールで切なく美しい。さらに、チームを組む個性豊かな3人の男たちの過去もさりげなく描写。なるべくして賞金稼ぎになった彼らとの対比で、ドミノの特異さと共通する孤独を見事に示し、深い余韻に包まれる。
(山口直樹)