「この監督は、恐ろしい」ドッグヴィル ちかしさんの映画レビュー(感想・評価)
この監督は、恐ろしい
Trier監督、恐るべし。アメリカ三部作という位置づけながら、ひたすら悪行に耐え続けるGraceには「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に近いものを感じ、黄金の心三部作に近い印象を受けた。しかしあれからは主人公の心の美しさを感じたものの、こちらからはものすごい不気味さを感じた。
一見アメリカにある排他的な田舎の社会と見えたドッグヴィルは、その牙を美女Graceへ向けてゆく。しかし誰もそこに違和感を覚えない。Graceすらもが、全てを受け入れてゆく。それを観る私たちは、彼女の代わりに怒りを募らせてゆく。これは「ダンサー」にも言えるかもしれないが、Selmaが息子という人質を取られていたのに対し、Graceはいくらでも怒りを表現することができるはずだった。我々はここに違和感しか覚えないのだ。しかし、これは監督の思うつぼなのかもしれない。人間の善意とは、悪意とはなんなのか。怖い、怖い作品だった。しかし、長い、長い作品だった。
そういうとこHeneke監督の「ファニーゲーム」に似てるかも。
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