劇場公開日 2003年6月28日

「言葉がから回る」シティ・オブ・ゴッド とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5言葉がから回る

2019年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

何を言えばいいのだろう。この映画を観た後で。

街を牛耳る3世代の絵巻。
だのに、フォーカスされる人物のほとんどが10代。

底なし沼。
あえて、自ら、その沼に身を投じるものもあれば、
無邪気に、目の前の手本と同じことをする者もいる。
この町の沼から抜け出す道を選んだはずなのに、つかまってしまった者。
あの時、あの場に行かなければ…。

バイオレンスに身を投じる者を追っているから、町全体がバイオレンスに覆われているようにも見えるが、
まっとうな道を選ぶことを望んでいる大人たちもいるのだが、
それでも、その人たちが無力に見えてしまうことに愕然とする。

この映画より残虐な映画はある。
やるせなさを感じさせる映画はある。
でも、時にポップに、時にコメディタッチに、それでも基本は淡々とそこに起こっていることを映し出す映画。
その演出に言葉を失くす。

それでも、幸運さが味方したとはいえ、自ら生きる道を選び取って、この町の沼から抜け出した少年が、狂言回し的な主人公であることに、一筋の光を見たいと、願ってしまう。

『トラッシュ』と合わせて観ると、良いかもしれないが、『トラッシュ』が作りごとに見えてしまうのは何なのだろう。

とみいじょん