「いい父親じゃなかった」チョコレート sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
いい父親じゃなかった
どん底に落とされた彼女の心に共鳴し、やがて二人は深い男女の仲になっていく。
もちろんハンクがレティシアに惹かれたのは間違いないだろうが、これはソニーへの仕打ちの罪滅ぼしでもあるのだと思った。
ある日、レティシアはハンクへの贈り物を持って彼の留守中に自宅を訪ねる。
そこでバックと出くわし、耐え難い差別的な言葉をぶつけられる。
ハンクは弁明しようとしたが、レティシアは「あなたも同類なのね」とハンクを振り切って去っていく。
病気で死を間近にしても心を入れ換えることの出来ないバックを、ついにハンクは見捨てる決心をする。
彼に対して愛情はまったくないが、安らかな老後を送って欲しいと老人ホームに送り出すハンクの姿が印象的だった。
ガソリンスタンドを買い取ってレティシアの名前をつけたハンクは、住居を追い出されたレティシアに一緒に暮らさないかと持ちかける。
レティシアも彼の想いを受け取るが、ハンクは自分がローレンスの最期を看取った刑務所の看守であることを隠したままにしていた。
ラストシーンは色々と観る者の想像力に委ねられていると感じた。
レティシアはソニーの部屋でローレンスが描いたソニーとハンクの似顔絵を見て、初めてハンクの正体を知る。
ショックのあまりベッドに何度も拳を振り下ろすレティシア。
彼女はアイスクリームを買って戻ったハンクの姿を見て呆然とする。
しかしされるがままにスプーンを口に入れられた彼女はすべてを受け入れたようにも感じた。
「僕らはきっとうまくいくだろう」と幸せそうに口にしたハンクの言葉がとても意味深に聞こえた。
ちなみに邦題になっているチョコレートは、タイレルの好物でもあり、ハンクがカフェでいつも注文するチョコレートアイスクリームを表してもいる。
また年配の白人男性と付き合う若い黒人女性の隠語でもあるらしい。