劇場公開日 2002年7月20日

チョコレート : 映画評論・批評

2002年7月15日更新

2002年7月20日よりシャンテ・シネほかにてロードショー

カタツムリのように歩む痛ましい愛の行方

かつて「地獄の黙示録」で「我々は両刃のナイフの上を進むカタツムリのようだ」というセリフがあったが、「チョコレート」に登場する人物は皆、そのカタツムリのようだった。つまり人生の先を望むとも望まざるとも、我が身を切り刻まねば前にも後にも進めないという意味で。だから男女の恋愛モノではあるが「チョコレート」というタイトルとは裏腹に映画は延々と“痛ましい愛”の行方を綴る。

家族全員が強固な偏見を持つことでしか親子の絆を確認できなかった差別主義者の死刑執行人と、差別される側に立たされるどころか愛の矛先を相次いで無残に剥ぎ取られる死刑囚の妻。自分の身を守ろうと必死になるほど彼らの心は血を流す。けれどいまは流れる血の温もりですら愛しい。血が流れている間だけは生きていると感じられるから。心が死んでしまう前に、彼らはもう一度だけ人生をやり直してみようと一歩を踏み出す。

静かだが深く、抑制されているが寡黙な感情表現が心の痛みを雄弁に物語る再生の物語。ラストに見せるハル・ベリーの表情が忘れられない。それは暗闇の中に垂れる一本の細い糸にすがりつくように儚く、しかもその糸はきっとこの先、複雑に織り込まれて行くと予感させる表情だった。

(大林千茱萸)

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