劇場公開日 2001年4月28日

「「保守<リベラル」の結末が危うくなったが…」ショコラ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「保守<リベラル」の結末が危うくなったが…

2023年2月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ラッセ・ハルストレム監督作品は、
これまで意識することもなく、結果的に、
「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」や
「ギルバート・グレイプ」
「サイダーハウス・ルール」を
観ていたのだが、
この作品を観て改めて、優れた演出力を
発揮する監督なのだと認識した。

また、私のような外国人の顔と名前の判別が
普段付きにくい人間でも、
苦にならないで観れたのも
その演出力の一端だったろうか。

さて、味覚が村人の心に影響を与えると
いった点からは
「バベットの晩餐会」を思い出させたが、
こちらは宗教色の違いよりも
“保守・伝統vsリベラル・変革”の
社会の在り方の観点からの、
その葛藤を描いた作品にも思えた。

主人公母娘の順調過ぎる程に
保守的因習社会に風穴を開けつつ、
人心を伝統から解き放つ経緯が描かれた。
そして、終盤近くにあった危うい雲行きも
影響を与えた村民に逆に救われ、
結果的に母娘が村に残ることの出来る社会
に変革出来てメデタシメデタシとなったが、
現実には伝統と改革のバランスは難しい。

私個人を考えてみても、
リベラル思想に理解を置きながらも、
年齢を重ねる毎に、昔を懐かしんだり、
変わらない古い社会システムを
再評価したくなるケースも
増えてきている気がする。

この作品、“甘味”が村民の心を宥和して
保守的因習社会に変革をもたらすという、
寓話的に単純化した構図なのだが、
監督の演出の上手さもあってか、
どっぷりとこのフランスの片田舎の物語に
最後まで浸ることが出来た。

KENZO一級建築士事務所